ハニーキャット
9
瞳に映るのは綺麗な黒髪が揺れる黒目で猫目の美人さんだった。
その姿を目にした瞬間、頭を過ったのは大好きな絵本の主人公 黒猫な王子だった。
なぜこんなときに思い出したのかは分からない。
でも、この人に惹かれている。ということは理解できた。
本当にいたんだ…王子様って。
先ほどの怖い出来事も忘れてしまう程に目の前の人物に心奪われていると…
「!?」
「あ…ごめ!」
相手が一歩近づいてきて思わず体を震わせてしまった。
そんなボクを見て慌てたように謝ってくる。
その謝罪に申し訳なさが沸き起こる。
さっきのことがあったから反射的に震えちゃっただけなのに。
助けてくれた人に怖がって、しかも謝らせるなんて…。
「あの、大丈夫?」
「っ…」
そんなことを考えているといつの間にか自然と視線が合うことに気づく。
どうやら相手がしゃがんだことによって同じ目線になったようだ。
さっき謝らせてしまったこともあり「大丈夫」と言いたかった。が、先ほどの恐怖心が残っているのか上手く声が出せない。
一言…「はい」だけでも言えればイイのに…。
なんで出せないの。
今の状況にもどかしさを覚えながら大丈夫だと伝える方法を考えた末に頷くという方法をとった。
そうすると相手がホッとしたように一瞬 頬が緩んだ姿が目に映る。
優しい人…素敵な人…。
その緩んだ表情に心解かされていく。
だが、それと裏腹に相手の行動に一瞬にして体が氷ついた。
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