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小説(人間話)
双葉と空の場合・・・眼鏡キャンペーンってなんだよ、2

「え、っと、なんか、眼鏡の縁を上げる仕草とか、外した時の表情の変化とか、いいらしいですね!」

まだドキドキしているが、ごまかすように続ける。

仕草の話は、友達がそう言っていた気がした。
眼鏡を3つも持っている人もいる。
曰く、休日用、お出かけ用、仕事用らしい。
緑とピンクとフレームのないツーポイントのものとだ。

たしかに、眼鏡によって雰囲気は変わる。

美人が赤い眼鏡をかけてればオシャレだし、逆に瓶底みたいな眼鏡だと台無し・・・この場合眼鏡を外したさいにギャップが生まれて、いい場合もある・・・と、先輩が言っていた。

その先輩もたまに眼鏡をかけている。いつもコンタクトだが、寝坊すると眼鏡になるらしい。

そういえば空の友人も眼鏡をかけている。
あれは、軽い雰囲気と頭よさげな二面性の演出だろう。
実際に頭いいのだが。

「眼鏡と言えば!おしゃれ眼鏡って言うじゃないですか。あれって眼鏡がおしゃれなの?かけている人がおしゃれなの?って友達に聞かれたんですけど・・・空さんどう思います?」

マグカップに口をつける。
そのまま空を伺うと小首を傾げていた。

さらに、ずる、と空の体がずり落ちる。もうソファと背中が接触してない。

「同じようにインテリ眼鏡も、かけている人がインテリなのか眼鏡がインテリなのかって・・・言葉の順的にはおしゃれとかインテリが形容詞になるかなぁって思ったんですけど」

「・・・うん」

うお!?また喋った!
てか、なんだよ"うん"って?!

「・・・で、でもそれじゃあ、眼鏡がおしゃれだったりインテリだったりで、」

「・・・!」

「おしゃれ眼鏡とかインテリ眼鏡って言われた人って眼鏡を誉められても・・・って感じですよね」

多分そうじゃないが。
だが途中で空がハッとした顔をした気がした。
なんでだ。

今はぽかんとした無表情で・・・
だんだん頭が、

・・・

「・・・――っ、?!」

・・・落ちた。
いや、頭が落ちたんじゃなくて、空がソファから落ちた。
コーヒーはこぼさなかったみたい・・・というか一瞬宙に中身が・・・いや、気のせいだ。

「ちょ、ちょっと!大丈夫ですか?」

ゴッて鈍い音がして、多分これが友達なら笑っているところなんだが、相手が相手なだけに笑えない。いや、ウソ。笑った。
とにかく立ち上がって空の傍による。
掲げていたマグカップを預かってテーブルに置く。

ソファとテーブルの間に挟まったまま動かない。

「どっか打ちました?」

腰か・・・もしかしたら頭か?!

「そ、空さん・・・?!もしかして救急車とかいりますか?!もう、そんな姿勢でいるからですよ!」

「・・・・・・いや、」

あ、動いた。

大丈夫らしい。

ゆっくりと頭を上げ・・・・


眼鏡が、ずいぶん下がって、

それがなくとも、こちらを見てるから、上目遣いってやつで、

目と眼鏡の位置が合ってないから、

これはもはや視覚補正器機の意味を果たせてないとか、


「・・・、」


・・・うん。
眼鏡っていいかもしれない。




「目、悪かったんですね?」

コーヒーを飲み終わって帰る前に、ずっと思っていたことを訊いた。
双葉に視線を戻した空はキョトンとする。

「・・・?」

頭を傾けて、視線で疑問を訴えられる。

「え、いや・・・眼鏡、かけてるから」

双葉の言葉に、あぁ・・・と呟いて眼鏡を外す空。
言われて気づいた、という感じだ。


外した眼鏡をじっと見つめていたかと思うと、それを双葉の顔に乗せる。

突然の接触に驚き、声を上げて身体を揺らしてしまった。
しかし空はかまわず双葉に眼鏡をかけさせた。

「・・・な、なに?」

終始無言の空の意図が読み込めず、なにがしたいのだとつぶやく。

「伊達」

「・・・政宗?」

「違う。伊達眼鏡」

そういえば確かに視界に変化はない。
顔の上になにか乗っている、少しの違和感だけで、合わない眼鏡を無理矢理かけるあの感覚はまったくない。
度が入ってないのか。

「・・・なんで?」

「キャンペーンだから」

「なんの?」

「眼鏡の」

・・・眼鏡キャンペーンって、なんだ。

「・・・」

「な、なんですか?」

じっと見つめられる。
無表情はやめてくれ。
まったく何をしたいんだかわからなくて、困るんだ。

居心地が悪く踵を返していよいよ帰ろうかと・・・その前に眼鏡を返そうと触った時に、空が言った。

「・・・似合うな」

この人どういうつもりで言ったんだ?

顔が熱い。


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