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小説(人間話)
双葉と空の場合・・・眼鏡キャンペーンってなんだよ、1

眼鏡が似合う人と似合わない人とがいる。

自分は、後者だ。と言うのは横寺双葉 視力1.2

そして、目の前にいるこの人は、まさしく前者だった。





『双葉と空の場合・・・眼鏡キャンペーンってなんだよ』






とある集合住宅"sheep's rest・・・シープズ レスト"404 号室の主、黒沢空。
つまり、双葉の目の前のソファに座ったこの人物は、いつもの如く何を考えてるかわからない無表情さでコーヒーを飲む。

容姿について説明すると、長身で痩せ形。黒い目と髪。肌は不健康そうに白い。
のびぎみの髪に隠れた顔は綺麗。

よく、最近の少女漫画に、こんな暗そうに見えてよく見ればイケメン・・・というキャラクターがいると思う。
プラス眼鏡の着脱によるギャップを持ち合わせたキャラクター・・・。


今の空は、それだ。


「(眼鏡・・・)」

双葉が物珍しげに、空がかけている眼鏡を、床にしいた だだちゃ豆の形をしたビーズクッションの上から見上げる。
黒の四角いプラスチックフレームの眼鏡。

空が眼鏡をかけている姿を双葉が見るのは、はじめてだ。

たしかに、空は目が悪そうなイメージが双葉の中にあった。だから特別不思議さも違和感もない。

のびぎみな前髪は正直邪魔そうだし、視界を遮って目も悪くなりそうだ。

そしてちょっぴり眉を寄せて目をほそめている表情が多い。

・・・眉を寄せているのは双葉のせいな気も、目を細めているのは双葉を睨んでいるから、という気もするが。

とにかく似合ってる。

「・・・眼鏡が似合う人いいですよねー」

返事はない。
振り向きもしない。

今日は、空はなんだか特別顔が白い。眼鏡の縁が黒いせいかもしれないが。

だが、機嫌が悪いわけでもなさそうだ。

なぜそんなことがわかるかというと、双葉は以前、機嫌が悪い(おそらく、だが。しかしあれを機嫌が悪かった以外の言葉で表現したら、空はとても気性が荒いことになる。
双葉の顔を見ただけで舌打ちしたり、「喋るな」って一言だけ突然言ったり、養豚場の豚を見るような目で人を見たりは、普段はしない人だ。)空を見たからだ。


今日は、ソファに背中を預けて、そのくせ浅く腰掛けているものだから姿勢が悪い。
己の分のマグカップは、さっきから両手に包まれて腹の上から動かない。

・・・お腹の調子が悪くて暖めているのかもしれない。

ともかく、今日はまだ「帰れ」という言葉もないから、機嫌は悪くない。

双葉は話しを続けることにした。

「でも、眼鏡好きってよくわからないです」

眼鏡のどのへんに興奮する要素があるのか・・・。

まぁ、たしかに中学の時は眼鏡をかけているやつから眼鏡を奪ってみんなでかけあいをして似合う似合わないと騒ぎはした。

双葉は先程の記述通り似合わない側だったが。

高校になれば半分以上は眼鏡ユーザーだろう。コンタクトの人もいるが。
だから、そうしたことで騒ぐことは減った。

こうして目の前で眼鏡をずり下ろしただらしない姿で口を小さく動かすのが・・・

あ、

「あぁ、俺もだ」

喋った。




「・・・・・」

「・・・・・・・・あ、いや、すいません。なんでもないです!」

思わず、ぽかんと空を見つめてしまった。
見つめているうちにずるりと、空の頭が一つ下がって・・・そんな姿勢でいるからだ・・・目が合った。

空は『なんだよ』とは言わなかった。
だが、目を覗きこまれた。・・・多分。

・・・喋った。空が喋った。
相づちだ。

び、びっくりして全然覚えてない。
どんな声だったか、どんな風に言ったか、忘れた!

いや、別に覚えてる必要とかないんだけどさ。


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あきゅろす。
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