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悪魔の囁き
03.選ばれた理由

「聞きたい事はぎょおさんあんねんけど……そもそも何でオレなん?」

 先程から視界にうつっているように、魂はたくさんある。ルシファーはオレを待っていたらしいので、何か理由があるのだろう。

「パラレルワールドの人間である事が一点。自殺で死んだ事が一点。もう一点はあなただから、ですかね」

 ルシファーは指を折りながら言った。

「軸の世界は神の管轄なので、簡単に手を出せないのです。その点パラレルワールドなら気づきにくいですからね。あなたがいた世界はできてからそれほど経っていませんから、目が行き届かないところも少なからずあった。そこに目をつけてここへ誘導させていただきました」

 いや、神の管轄だから手が出せないって……本当に悪魔だったりするのだろうか。妙に納得できるのだが。

「死者の魂は冥府の神の領域なのですが、あなたは事故、病気、老死と違って寿命を全うしていません。そのせいで歪みが生じ、軸に干渉しやすくなったのです。自殺した魂は転生させやすい、と言えばわかりやすいでしょうか」

「へぇ、そうなんか」

「あと、最後の一点に関してですが、あなたの考え方や能力なら他の方よりもパラレルワールドを作りやすいと思ったんですよ。あなたは原作など気にしないでしょう?」

「そうやな」

 どんな世界であっても生まれた以上は全力で楽しむだろう。少なくともテニスはあるのだろうし、更に極めてみるのも悪くない。

「それですよ。原作を気にしすぎるようでは何も変える事などできませんから。私がわざわざ送るのです。きちんとしてもらわなくては」

「……ちなみに作れへんかった場合は?」

「前世と同じように治らない怪我をしたあげく、自殺できなくなりますね。というより、私がそうします。取り引きなので、当然ですよ」

 期限は物語が終わるまでですね、と言うルシファーは結果主義なのだろうか。それにしたって良い条件すぎる気がする。



「まとめると、オレがパラレルワールドを作る代わりにアンタが記憶を持ったままテニスのある世界に転生させてくれるっちゅー事か?」

「そんな感じです。まぁ、パラレルワールドを作ると言うよりはパラレルワールドにする、と言った方が正しいでしょうが」

 またややこしい。

 軸となる世界=原作世界という話なので、要するに物語の中の――二次元の世界なのだろう。推測ではオレのいた世界の元になる世界も、どこか他の世界では本や漫画として存在しているに違いない。

 パラレルワールドはその軸から外れた世界。つまり原作通りではない世界という事か。そして、いないはずの人間がいるだけでは成立しないはずだ。主要人物に影響を与える、と言っていたので、例えばONEPIECEのエースが死なない世界とか。

 “作る”ではなく“する”というのはオレの行動でその世界が“変化する”から。原作世界ではなくなり、平行世界に変わるのだろう。


 そこまで考えてから、オレはルシファーに尋ねた。

「ちなみに、オレが行く世界はどこなん?」

 原作を知っているかいないかでは大きく違う。自慢じゃないが、生前のオレはテニスと勉強しかしなかったのでそういったものには詳しくない。

「『テニスの王子様』及び『新テニスの王子様』ですよ」

 ルシファーの返答に、オレは安堵すると同時に歓喜した。テニスつながりで何度も読んだそれは、通常ではあり得ない技の飛び交うテニス漫画だ。当然主要人物はテニスが強い。


「……おもしろいやないの。その取り引き、乗ったで」

 にやりと笑い、今なお鮮明に残るラケットとボールの感覚に思いをはせた。










 選ばれた理由



(前より酷い地獄を見るかもしれんけど)

(チャンスやと思った)




[*負けたわ…]

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