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悪魔の囁き
12.心地好さ

「あー、そろそろ帰らななぁ」

 オレが言うとブン太は空を見て携帯を取り出し、げっ、と呟いた。

「やっべ、俺もだわ」

 今は夏である。日が暮れるのは遅いため、思っているより遅い時間なのだろう。お互いに小学生なので門限もある。


「なぁ、また会えるか?テニスの事とかも聞きてぇし」

「こっちにおる間は大丈夫やろ。番号交換しとく?」

「おう。ってか、どこ住んでんの?」

 言葉が関西弁に似てるので(というか関西弁だと思っているかもしれない)不思議に思ったらしい。こっちにおる間は、というのも引っかかったのだろう。

「どこって……あ」

「どうした?」

「うわー、オレ迷子やった」

 今の今まで忘れていた。しかも今思えば、人を探すんじゃなくて携帯の位置検索使えばよかったのに。

 ……まぁ、テニスコートは見つかったし、結果的には良しとしよう。

「お前迷子かよ!」

 また笑い始めたブン太を半分くらい本気で叩き、オレは迎えでも呼ぼうかと携帯を開く。

「そうだ。俺が近くの駅まで連れて行ってやるよ」

「ええって。誰か呼ぶし」

「だけどさぁ、ここがどこか説明できねぇだろい?」

 痛いところを突いてくる。良い目印も見当たらないし、子供用携帯ではないので他の人に居場所を知らせるような機能はついていない。

「駅まで行けば呼べるし、もしかしたら帰り道がわかるかもしれねぇ。な?俺って天才的?」

「それ以前にブン太が教えてくれればええんやんけ」

 住所とか何の近くとか。

「無理」

「何でやねん」

 思わず突っ込むが、教える気はないらしい。諦めて案内される事になった。




 ブン太が家に連絡を入れて番号を交換すると、お互いの話をしながら歩き出した。

 話題はもっぱらテニスと食べ物だ。その内の八割くらいが甘いものだったりする。オレも甘いものは好きなので結構盛り上がった。

 それから兵庫県に住んでいる事や祖父母の家に遊びに来ている事を話すと、明日神奈川を案内してもらう事になった。

 何でだ。ありがたいけど。

 代わりにオレはテニスを教える。まぁ、コイツが将来強い選手になる事は知っているので満更でもない。どうせなら原作より強くしてやりたいな。

 なんて、上から目線で考える。

 いかんいかん。慢心は負けフラグや。そうでなくても努力を怠る原因になる。

 そもそもしょっちゅうは会えへんしな。コーチまがいの事はできんやろう。


 たくさん話しても足りないくらい話は弾んだが、駅に着いたので切り上げる。

「待ち合わせはここで良いだろい?」

「かまへんよ」

 確認してから頷き合い、手を振って別れる。




 あんなに話したのは久しぶりかもしれない。オレは普段、それほど話さないタイプだ。前世のあるオレは聞き役に徹する事が多く、さっきみたいに相手と同じくらい話すのは珍しい。樹さんや柚姉は別だが……。

 そう考えて、あぁ、と思った。

 趣味が合うからか。

 テニスと甘いもの。それに、ブン太も聞くのが上手い。弟がいるからかな。


 オレはポケットから携帯を引っ張り出した。










 心地好さ



(位置検索を使えば良かったんやと)

(車に乗ってから気ぃついた)





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 長くなるので案内の話は飛ばしたいと思います。

 消えた小学生の謎(笑)は拍手番外にて。




[*負けたわ…][勝ったで!#]

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あきゅろす。
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