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悪魔の囁き
11.夕焼けと

 オレには二人、年の離れた兄貴がいる。だから両親や祖父母の年齢は周りの友達より高い。

 そして樹さんは長女であるオカンと結構年が離れているらしかった。つまり、オレの友達の両親よりちょっとばかし若いわけで。

 樹さん曰く、かのサムライ南次郎とは学生時代からのライバルだそうだ。彼が引退した今でも交流はあるらしく。

 そういう話を聞いていたので、一番最初に会うキャラはリョーマかと思っていた。実際、会わせてやりたいと言っていたし、中学生になる頃には会えるだろう。

 あるいは、距離的に近い四天王寺の面々とか。家のつながりで跡部とか。同じ県である門脇(存在薄いけど)とか。

 八津じいちゃんの家が神奈川である事なんてスッポリ頭から抜けていて、思い出したところで王者の彼らの家の場所なんて知るはずもない。だからこそこの出会いは予想外だった。



「……志摩啓輔や。啓輔でええ」

 一瞬反応が遅れたが丸井は気づかなかったらしく、笑顔を見せた。

「そうか。なら俺もブン太でいいぜ」

 そう言って近づいてくる丸……ブン太の手にラケットはない。たまたま散歩でもしていたのだろうか、なんて考えていたので、先程以上にブン太の言葉に対する反応が遅れてしまった。

「なぁ、テニスっておもしろいのか?」

「え?」

「啓輔がさ、おもしろそうにしてたから」

 聞き返したのを理由を尋ねたのだと解釈したのか、ブン太はそう続ける。


 もしかして、まだテニスをしていないのだろうか。

 オレが九歳なのでブン太は八歳、ジャッカルと会うのは一年後だ。妙技を編み出したのは中学生になってからだし、おかしくはない。

 それにしてもテニスがおもしろいかだって?

「おもろいに決まっとるやんけ」

 テニス以上におもろいスポーツはない。別に他のスポーツを否定するわけではないが、少なくともオレはそう思う。

「相手がさっきみたいに弱くてもか?」

「そら強いにこした事はないけど、オレはテニスするんが好きなんや。どんな相手でも変わらんよ」

 そう、きちんとした理由がない限り楽しいテニスをする。それがオレのテニスだ。

「まぁ、不完全燃焼な分は相手で遊んどるしな」

「お前何気にひでぇな」

 なんて言いながらも笑うブン太。セリフと行動がマッチしていない。

「見た目だけで嘗めてくるヤツが悪いんや」

 ニヤリと笑ってやると、更に笑いながらそうだな、と返された。




 しばらくして笑いがおさまったブン太は真剣な、でもわくわくしているような表情で口を開いた。

「そんなにおもしれーならやってみようかな。テニス」

「お?オレのテニスに惚れたんか?」

 からかうように言ってやると、ブン太は顔を真っ赤にする。

「ち、ちげぇよ!ただ最近ヒマだから……それでだなぁ!」

「はいはい。素直やないなぁ」

「ちがっ!啓輔!」


 じゃれ合いながらふと見上げた空はブン太のような茜色で。










 夕焼けと



(前世でも思っとったけど)

(赤い髪ってキレイやなぁ、なんて)





――――――――――――――――――――

 私の中のイメージでは「テニスに惚れたのか」と聞かれたくらいで赤くなるキャラではないですが、ブン太は原作より少し幼い感じで。

 あと、調べてみたところ漫画では「…だろい」「天才的?」等の口癖はよく出ますが「…ぜい」「…みろい」等はごく稀にしか使われていないのであまり使用しないようにしたいと思います。




[*負けたわ…][勝ったで!#]

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