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情報屋、やってます。
恋人ごっこ 1
朝、相田正行から「今日ひま?」というメッセージが来ていた。
遊ぶようなお友達とかおらんし、基本やることと言えば情報集めぐらいで、いくらでも時間は調整できる。
無駄なやつとの時間は取らへんけど、相田正行は最近ちょっと特別。

食パンが焼けるのを待ちながら「ひま」と送れば、すぐ「寿司食いいかね?」と返ってきた。
了承の返事を送り、焼けたパンを取り出す。

なんだか、平和で笑えてくんなぁ。

少し前までは、チーム同士の抗争がめちゃ激しく、いろんなチームの動向にずっと目を光らせてたから、気が抜けへんかった。
しかも恨みを買いまくってた俺は外を出歩くのにも相当気を使ってて、誰かとメシに行くなんて今からすると考えられへん。

恨みを買った過去は消されへんから、今ももちろん注意しながら街を歩いてる。
けど、相田正行はそれなりに強いらしいし、巻き込んで怪我さす心配もなくて気が楽。

束の間の休息、幸せ、逃避ーー。

そんな言葉達が、ふと頭を過ぎった。

椅子に座って、ぼんやりと壁にかかっている時計を眺めながら食パンを齧る。

夢の中にいるようで、ふわふわして落ち着かへん。
相田正行と出会ったのも、好きやと言うてもらえてるのも、それに絆されてるのも、全部偽物のような気になってくる。
ずっとこのまま微睡んでいたい気もするけど、いつか醒めるならさっさと醒めてしまえとも思う。
いっそのこと、目が覚めたら天国でした、とかいうハッピーエンド、ないかなぁ。
ないんやろうなぁ。

きっとこの夢が醒めた後待っているのは、生き地獄みたいな現実。
先のことを考えると、恐怖とか不安とかを通り越して、虚無に行き着く。
俺には何が残されてるのか。何も無いような気がしてならん。

ついこの間まで何とも思わずその虚無の中にいたはずやのに、少し外に出てしまえば、もうそこには戻りたないと心が拒否反応を示す。

心地いいけど、苦しい。

麻薬みたいや。

いつの間にか最後の一欠片になっていた食パンを口に押し込み、手を払う。
家を出る時間までは、まだ少し余裕がある。

椅子の上で片膝を抱え、額を膝に押し当てた。
目を瞑ると、暗闇に引きずり込まれていくような感覚に陥る。
ずっとプライドと意地だけで保ってきたものが、崩れそうになっていた。

怖いなぁ、相田正行。
人生は誰かに決められたとしても、俺自身だけは俺のものやと思ってたのに。
最後にこの手に残ってたそれも、相田正行にくれてやった方が有意義なんちゃうかと思い直すぐらいには、あいつに惹かれてるのが事実。
ただ、もし捨てられたとき、行き場を無くしそうで、まだ手放す覚悟ができてへんだけ。

"bat"との一悶着が片付いたら、全部話してみようと思ってる。
それで、それでもまだ俺のことを変わらずあの真っ直ぐな目で受け止めてくれるなら、相田正行に俺の人生も俺自身も、預けてみようか。

目を開けて顔を上げる。
グチャグチャした思考をかき消すように、ひとつ伸びをした。

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あきゅろす。
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