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情報屋、やってます。
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ということで、さっそくお目当ての人物を呼び出してみた。
通い慣れたお馴染みのファミレスだけど、そういえばとーやくんと入るのは久々だなぁ。

目の前でホットの紅茶を啜るとーやくんは、やはり喋らなければひたすらに何もかも完璧。
人形よりも精巧な顔立ち。カップを持つ指は程よく角張りつつもスラリとしていて、男の俺でも魅了される。
凄いなぁ。神様に愛されて生まれてきたみたいな見た目。
神様はきっと、とーやくんをつくるとき、見た目に凝りすぎて中身をちゃんと整える時間がなかったんだな…。

だいぶ失礼なことを考えながらしげしげと目の前の造形物を眺めていると、その顔が鬱陶しそうに歪んだ。

「なんや。気持ち悪い目で人のこと見て、どないしてん」

あー、出た出た。

「やーっぱ喋ると残念だよねぇ」

「別にあんたに残念がられたところで俺にはなんの不利益もないけどな」

「…まじで可愛くないよねとーやくんって 」

「それほどでもー」

ふん、と鼻を鳴らしたとーやくんは、ゆったりと腕を組んでファミレスのソファに持たれた。

「で?呼び出したのはどないな用や」

「あぁ…何から聞こうかな」

色々と聞きたいこと、というか探りたいことは山ほどあるんだけど…まぁ目先で気になるのはあれかな。

「マサリンに自分からキスしたってほんと?」

「……」

途端、とーやくんは心底憎たらしげに口をひん曲げた。
あらら、この反応はもしかして。

「すぐあんたに言うねんな、あいつ」

「……ほんとなの?じゃあ、"bat"とカタついたら付き合うってやつも?」

「うっざ。筒抜けやん」

「えぇぇ、9割マサリンの夢だと思ってたんだけど…」

このとーやくんが、あのマサリンに。
あれ、しかもついこの間までめちゃくちゃマサリンのこと避けてなかったっけ?

不可解すぎる。風の吹き回しとかじゃ片付けられないレベルで。

ただ、もしあるとすれば、俺の中で捨てられてない可能性が1個だけ。

「マサリンと付き合ってどうしたいの?」

それは、とーやくんが、マサリンを懐柔しようとしてるんじゃないかっていう、邪推。
マサリンのことを気に入ってるとか言い出した時点であれ、と思ってたけど、いよいよ"bat"が潰れたらなんて条件つけられて疑わない方が難しい。

「どういう意味や。セックスしたいとでも言うといたら満足か?」

「そーゆーんじゃなくてさぁ?なんでいきなり手のひら返したのかなって、気になるじゃん!」

明らかに機嫌の悪くなったとーやくんは、今にも噛み付いてきそうな雰囲気。
野良猫みたいだよねぇ。

「5万寄越せや。そしたら教えたんで」

「いやさすがにぼったくり!」

「一円たりとも値切れへんぞ」

ぐぅ。完全にシャットダウンか。
ますます怪しいじゃん…。
やっぱりマサリンをとことんふにゃっふにゃの腑抜けにさせて、
"bat"と抗争させようと、

「なぁ、もしかして疑ってるん?」

うわっとぉ。

「心読まないでよ…」
「読んだのは表情だけやで」

とーやくんは挑発するように鼻で笑う。

「言うとくけど、相田正行手玉に取るメリットなんて、俺にはほぼないからな」

「……」

「大方、相田正行を取り込んで"bat"潰すのに使おうとしてるんかとか、疑ってんねやろ?でも、そんなん無駄な労力やって、頭いいあんたなら少し考えればわかるやろ」

おっしゃる通り、ってやつだ。

本当は疑う余地もないことはわかってる。
もし仮にとーやくんがマサリンを意のままにできるようになったとして、チームの動向を決めてるのは俺だからマサリンが無茶しようとしても必ず俺が止める。
マサリンがそれでも1人で"bat"に乗りこむとなっても、たった1人で"bat"を確実に解散に追い込めるかと言えば、NO。
そんなまどろっこしいことするより、"bat"が奇襲かけてくるのを待って、それを俺らにいち早く知らせて対抗させる方が、明らかに勝算がある。

でも、だからこそ、じゃあなんで?っていうのが本音。
なんで今更マサリンにそんな期待させるようなことをするのか。

「てことは、まさか、マサリンのことほんとに好きになったとか…?」

だって、それしかないじゃん。
もしかして、本当にそういうことなのか?

とーやくんは、視線を窓の外に逸らし、ゆったりとテーブルに肘をついた。

「……マサリンさんだけやねん、ここまで踏み込んでくんの」

「…へ?」

「マサリンさんなら、俺のこと捨てへんような気がした。そんだけ」

「………」

えええ、待って、なんか重くない?
捨てるって何。
マサリンなら、って、とーやくんは誰かに捨てられたの?

思い出すのはとーやくんの家にお邪魔したときの違和感。
一軒家に、たった一人住んでるとーやくんは、もしかしたら家族に捨てられたんだろうか。

言葉に窮していると、とーやくんの無感情な瞳がこちらを向いた。

「教えたから、5万円な」

「えええ詐欺じゃんっ」








ちょっとだけ幸せになってほしいと思ったのは内緒

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あきゅろす。
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