[携帯モード] [URL送信]

情報屋、やってます。
4
目と鼻の先で、相田正行が息を呑むのがわかった。
嫌悪感は、ない。

何度か啄んでから顔を離す。
すぐ間近で見る相田正行の顔は、驚きと困惑と、情欲と…いろんな表情が綯い交ぜになっていた。

「透哉ッ、」

余裕のない顔がぐっと近づいてきて、唇を噛むように奪われる。
噛み付くようなキスはだんだん深くなっていき、お互い貪るように舌を絡めあっていた。

意外と、ウブに見えてちゃんと知ってんねんなぁ、とか。
浅くなる呼吸の中でぼんやりと考える。

「ふ、は…ッ」

そろそろしんどくなって息継ぎついでに身を引く。
が、頭の両サイドをガッシリ固定され、再び相田正行に呼吸を塞がれた。
いやいやいや、全然止まらんやんこいつ。

「んん、ッおい!」

肩を押し返し無理やり引き剥がすと、焦がれるような瞳と視線がかち合う。

「足りねぇッ、」

一瞬、獣に睨まれた感覚に陥り、ゾクリと背中が粟立った。
骨の髄までしゃぶられるんちゃうかと戦々恐々しながら、なすがまま口膣内を舐め回される。

息の根を止めにかかっているかのような激しいキスは、嫌いではなかった。
女ちゃうねんから、気遣いとか優しさとか、いらん。
その程度で傷つけられたと喚くほど、守られた環境でのうのうとは生きてきてへん。

ハマりそうやな、このゾワゾワする感じ。

自分の性癖に気づいてまって心の中で呆れながら笑っていたら、ようやく相田正行が離れていく。

「ハッ、はぁー、っごほ、ゲホッ」

勢いよく空気が肺に流れ込んできた反動で噎せる。
冷静に考えたら、キスで噎せるってどないやねん。

酸欠気味のせいでボヤけた視界の中相田正行を伺うと、額に手を当て天を仰いでいるところやった。
あ?何やその反応。

「ごめん、透哉……勃った」

言われてそこに目を向ければ、たしかに。
思わず笑みが零れた。

「…なぁ、マサリンさん」
「?」

「意外と、あんたの攻撃効いとるかもしれへん」

「…へ?」

「あんたとどうこうなるのも、面白そうやな」

「………ぇぇえええ!?と、透哉、それって…」

腕に掴みかかってこようとする相田正行の手をするりとすくい上げる。

「今はちょいゴチャゴチャしてるから、その辺落ち着いてからな。そん時にあんたの気が変わってへんかったら、よろしく頼むわ」

「…………」

ポカンとしたまま動かへん相田正行は、どうやらキャパオーバーらしい。
そらそうやな。昨日までキスされたくらいで延々無視してたのに。

けど、この人なら、俺の抱えてるもんにも全部、正面からぶつかってきてくれるかもしれへんと、淡い希望が芽生えていた。
飾ることなく等身大で、むしろ俺よりも水崎透哉という人間を受け止めてくれるのではないか。

そんときは、俺ごときくれてやる。

「ちゅうことや。トイレ貸したるから抜いてき」
「ッぐぅぅ…!!」

獣のような唸り声を上げて、相田正行はリビングをそそくさと出ていった。

ふやけた唇を、舌でペロリと舐める。











じわじわと心を蝕む矛盾すら心地良くて


[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!