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情報屋、やってます。
3
相田正行の厄介な所は、アホすぎるところ。
例えば櫻井弘人やったら、分からないことがあると自分で仮説を立ててから検証しにかかってくるので、情報操作で錯乱させやすい。
けど相田正行は、分からないことに対する解をダイレクトに要求してくる。
夏休みの宿題全部答えだけ写して丸付けてたタイプや。

思考力はいつまで経っても養われへんけど、その代わり答えに辿り着くスピードは格段に早い。
こういう奴には、正面から取り合わへんようにするのが吉。

「なんや、俺と仲直りできれば今日は満足か。帰るかそろそろ」

「まぁそのために来たんだけど…、でも満足かっつーと、足りねぇような」

「あーそ。俺は満足やし帰れ」

「え!透哉も俺と仲直りしたかったの!?」

パァっと顔を明るくするこいつの解釈がポジティブすぎて、こっちがイラつく。

「そういうことちゃうねん、ほんま読解力あれへんな。要は帰れってことや!」

「や、だってまだ10分くらいしか…!」

「俺んちはファミレスと違て長居無用やで」

「あ、じゃあ晩飯食いに行こうぜ!何食べたい!?」

「せやからなんでそーなんねん!!」

あかん、何を言うても無駄な気がしてきた。
思わず脱力して、ソファの背もたれに頭を預ける。

「透哉」

「あ?」

落ち着いた声が名前を呼ぶので、鬱陶しさのにじみ出た表情を隠すことなく、首を捻って顔を向ける。

「…何からそんな逃げてんの?」

「逃げてへん」

むしろ、逃げられへんねん。
わかれよ。察して離れてくれよ。

いや、ずっと逃げてきたんかもな。
踏み込まれへんように、ずっと。

「何か抱えてんだろ?俺にできることねーか?」

「ない」

即答すれば、苦虫を噛み潰したような顔をする。

ほんまはあんねんで。
けど、それは相田正行の立場を利用するだけ利用してポイするっていう使い方になってまう。

そこまで思い至ってから、この1年半、そないなこと腐るほどしてきたはずやのになぁと、自嘲する。

これ以上は近づいたらあかんて、頭ではわかってる。
なんで人間って、都合のいいように動かれへんのやろ。

「なんで俺なん?」

「え?」

「あんたみたいな人、好いてくれる奴いくらでもおるやろ」

「あー、えと、ありがとう?…けど、いくら好きになってもらっても、俺が好きになれなかったらあんま意味ねーしな」

こいつらしい。追われるより追いかけたいとか、そういう次元とちゃうんやろうな。

「せやから、なんで俺なん」

「んー、なんでって言われると難しいな。直感っつーの?好みとかいう話じゃなくて、初めて会った瞬間にこいつだ!って思った」

「…怖いな」

「え!!」

思わずふはっと笑いをこぼすと、相田正行はなぜか切なそうに顔を歪めた。

「笑顔、たまんねーな…」

「だいぶキモいであんた」

「ずっと笑ってればいいのに」

言われて、最近あまり笑ってへんことに気づく。
いつからと言われれば、間違いなく一家が離散したあの時からで。
別にあの時のことがトラウマになってるわけではない。
ただ、そこから世間一般的な楽しい生き方を選択してこなかっただけの話。

束の間の幸せなんて、手に入れへん方がいいに決まってる。
けど、目の前に転がってたら、思わず拾いそうになってまう。

止めておけと、本能が警鐘を鳴らしている。

頭の中がグチャグチャやった。

「なぁ、俺のこと、ほんまに"そういう意味"で好きなん?」

「…へ」

「キスしたいとか、その先したいとか、思うん」

相田正行はボッと顔を赤く染めて、こくりと頷いた。

「…こっち来てみ」

少し隙間を空けて座っている相田正行の腕を、くいっと軽く引き寄せる。

「え、え、」

わけもわからず従う相田正行に、身を乗り出して顔を近づける。

「ただの気まぐれやぞ」

そのまま唇を重ねた。

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