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情報屋、やってます。
一目惚れ 1
…ー櫻井弘人sideー…

"dog"の溜まり場として勝手に占有している廃工場の倉庫内で、のんびり仲間とおしゃべりをする夕暮れどき。
総長の相田正行、通称マサリン(俺しか使ってないけど)がやって来た。

「弘人!」

あ、弘人っての俺ね。櫻井弘人。
"dog"の副総長でーすっ。

興奮した様子で足早に向かってくるマサリンは、まるでとっておきの宝物でも発掘したかのよう。

「どしたのマサリン」

「俺、一目惚れしたっぽい!」

「えっ!?マサリンが一目惚れ!?」

あの枯れ果てた長として名高かったマサリンが!!

実はマサリン、まだ誰とも付き合ったことないんだってー。
しかもさ、付き合えないんじゃなくて、付き合わない、っていう。
理由は、相手を好きじゃないから。
たっくさん可愛い子紹介してあげたのに、「なんか違う気がする」って全然見向きもしなかった。
せっかく顔立ちも体つきもいい男なのに、宝の持ち腐れすぎる。
ほんとそういう意味では男として枯れてるなって思ってたけど、へぇ、まさかの一目惚れかぁ!

「どんな子どんな子?」

興味津々すぎて身を乗り出して聞くと、マサリンは真剣な表情で力強く、

「めっちゃ綺麗」

言い切った。

ミスコン優勝者にすら靡かなかったマサリンに綺麗と言わせるとは!
ますます興味が湧いてきた。
これは一大事でしょ!

「うわぁ、見たいなぁ!高校生?」
「あぁ。たぶん七条学園の制服かな」
「ふぅん、七条ね…。どやって知り合ったの?」
七条といえば俺らが通ってる高校と同じくらいのFラン高校で、チームに所属してるヤツらもゴロゴロいるようなところ。
ってことは、七条にいる誰かからの紹介か?

マサリンは何故か怪訝な顔をする。

「あ?知り合ってねーよ?」

「は?」

「道ですれ違った」

おいおい、ガチもんの一目惚れじゃん。










ということで翌日、その子を見かけたという道路で待ち伏せ中。
マサリン曰く、ここが通学路なんじゃないかとのこと。

ファミレスの横にある、高さ50cmほどの花壇の縁に2人で腰掛けて、ターゲットが現れるのを待つ。

「けどさー、すれ違っただけで惚れるってどーゆー現象なの?」

「どういうって言われてもなぁ…。なんかすれ違った瞬間ビビってきたんだよ、こう…わかんねぇ?」

「よくそれで伝わると思ったね…。可愛い子いるなー、一発ヤらせてくんないかなー、みたいなこと?下半身にビビッと来ちゃった的な?」

「ばっ、ふざけんなよ、そんなやましい感じじゃ…あ、来た!」

マサリンが弾かれたように声を上げた。

「え?どれ?」
「ほら、あれ、綺麗なやついんだろ」

はあ?特にそこまで綺麗な女は見当たらないけど…。
首をかしげながらマサリンの指さす方向をくまなく探すが、やっぱいない。

「全然見つかんないんだけど…」

「あいつだよあいつ!あの男」


「……は?」

おい待てマサリン。


――男?



男に一目惚れしちゃったの?


「さも当然のように男に一目惚れしたとか言うのヤメテよ!」
「あれ、男って言ってなかったか」

マジかぁーーー。
いや、まぁ、別にそーゆーのに対して偏見とかないからいいんだけど…。
てゆーか、俺もぶっちゃけ男いけるし。
でも、初恋か知らないけど、せっかく見つけた恋愛対象が男ってのはどうなのさ…。

それはともかく、どれだって?

んー、あ、あの子か!
男だとわかって探せばすぐだった。

え、確かにめっちゃ綺麗。
モデルか何かしてんのかな。
テレビや雑誌で見かけても違和感ない、圧倒的顔面の良さ。

男にしとくのもったいないなぁ。
かといって女っぽいわけでもないけど。

まるで作り物みたいに均整の取れた小さい顔に、少し暗めの茶髪が自然だけどいい感じにセットされてる。
目はちょっと吊り気味で鋭く、キツい印象。
ただ、またそれが綺麗さを強調してるんだろうなーって感じ。

まぁ、これなら一目惚れするのも、わからんでもない。
前紹介したミスコン優勝者よりも綺麗だわ。

「よしマサリン、ナンパするよ」
「え?」
「見てるだけじゃ進まないでしょー」

滅多にないマサリンの恋沙汰、応援したげようじゃないか!

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