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情報屋、やってます。
2
電灯に照らされた道を相田正行と二人で歩く。
溜まり場からの道中、心なしか相田正行はいつもより元気がなかった。
溜まり場おった時はいつも通りやったと思うんやけどなぁ。

「なんかさぁ、」

俺の家の庭が見えてきたとき、相田正行がおもむろに話を切り出した。

「仲、いいね」

「………誰と誰?」

「え?透哉とナツ」

「あんたどこに目ぇついてんねん。あれで仲良いわけないやろ」

「そーか?何でも言い合える関係みたいな感じだったじゃん」

「俺は誰にでも概ねそんな感じやけどな」

俺が気を遣って遠慮する相手なんてほとんどいてへんで。
奈都にはそれプラス扱いが雑なだけ。
別にあいつが腹ピーピーになろうがスマホぶっ壊れて苦労しようが、ざまぁみろとしか思えへん。
むしろ嬉しいぐらいやわ。

「んー…あ、あとあれかな、ナツ後輩なのに透哉には敬語使ってないから」

「俺もあんたに敬語使ってへんやん。それと一緒ちゃうの?」

「透哉は俺らのこと敬ってないからって前言ってたじゃん」

一番最初に会ったとき、櫻井弘人を極限までイラつかせるために捲し立てたあれのことか?

「せやから、一緒やろ。あいつ俺のこと1ミリも敬うつもりあれへんから、あんな生意気な口きくねん」

「仲がいいようにしか見えなかったけどな…」

「…………………」

あかんわ、何を言ってもこいつの脳内補正がかかって何の意味もない。
仮に俺と奈都が仲良かったとして、なんであんたがへこんでんの。

無駄な説得は諦めて、鞄の中から財布を取り出す。
往復の電車賃が400円やから、護衛代金と合わせて500円でええやろ。
俺にしては割りと高賃金。

「はい、これ。電車賃込みな」

相田正行が手を出して、俺が差し出した硬貨をぼんやりと受け取る。


「………いいなぁ」


たぶん今自分が500円受け取ったことにも気づいてへん。
いいなぁってなんや。
どこにそんな羨む要素があってん。

鞄に財布をしまいながら、この超絶めんどい男をどうしたものか考える。
扱いもっと雑にしたらええんか?
暴言吐きまくったらこいつは喜ぶん?
いやそんなんただのドMやん、俺が受け付けへんわ。

ほんま、めんどい。

めんどいはずやのに。

「マサリンさんよく聞け。俺、奈都のことはだいぶ嫌いやけどな、」

相田正行が首を傾げながら顔を上げた。




「あんたのことは結構気に入ってる」



「……………………………へ」

「送ってくれてありがとうな。気ぃつけて帰れよ」

ぽかーんとした表情のまま固まった相田正行に、くるりと背を向ける。

まぁこれで少しは伝わったやろ。

そのまま歩き出そうとしたら、後ろから手首を掴まれた。
手首掴むの好きやな、こいつ。
今度はなんや。

「なに、」

あれ、なんでこんな相田正行の顔がどアップ、


「……………………………」



唇に触れたそれに、今度は俺が動けなくなる。

すぐに離れていった顔を、思わず凝視する。

いやいやなんでお前がそんな驚いた顔してんねん。

「す、すき」

舌足らずに吐き出された言葉は、前にも一度聞いたもの。
暗いからかろうじて表情が読み取れる程度やからわかれへんけど、またあの時みたいに真っ赤に、なってんのかな。

「………おれ、あんたのこと気に入ってはいるけど、すきとはちがう」

違うと、思う。

あからさまな好意を向けられて、ちょっといい気分になってるだけや。
最初は男からの恋愛感情なんてただの恐怖でしかなかったけど、どれだけ拒んでもズカズカ踏み込んでくるその心意気に、少しほだされてるだけや。

今まで、そこまでして俺に近づいてくるやつがいてへんかったから、珍しくて、気になってるだけや。

「わ、わかってる!」

バッと手首から手が離される。

「わかってるけど、抑えらんなかった、」

その手が相田正行の胸にぺたりと押し当てられた。

「……やべぇやべぇやべぇやべぇ窒息死しそう」

意味のわからない呪文を早口で唱えると、

「じゃ、じゃあまた!!」

別れの挨拶を告げ、相田正行はさっき二人で歩いてきた道を驚くほどの早さで駆けていった。

「……………………」

掴まれていた方の手を、あいつの真似をして胸に当ててみる。

「……………わけわからん……」











あいつも自分も

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