情報屋、やってます。 策略 パソコンを立ち上げてメールボックスを確認する。 新着が一件。 クリックしてメールを開くと、本文が一行だけ。 "LINE教えて" どこの迷惑メールやねん。 けど怪しげなリンクもファイルも貼られてへんし、差出人はほぼあいつで確定。 せめて名乗れや。 返信ボタンを押して、11桁の数字を羅列しただけのものを送信する。 それからほとんど時間を空けずにスマホがピロピロ鳴り出した。 番号はあまり確認せずに通話ボタンをタップする。 「もしもし」 『あ、透哉?』 「あぁ」 『久しぶり』 「どこがやねん」 こういう時の笑い方にまで卑屈さがにじみ出てるで、矢島由良。 金子のやつ、嫌とか言っときながらちゃんとパシられてくれたやんか。 『で、L○NE教えて』 「嫌や」 『なんでメアドもケー番も教えてくれたのに、L○NEはダメなの』 「L○NEは業務用には使ってへんねん」 『業務用……』 「何か情報欲しかったらいつでもどうぞってこと」 『……フリーになったの?』 「お前らにつかへんことだけは確かや。金はもらうで」 『金渡すなら直接会わねーと』 「口座教えるから振り込んで」 『振り込め詐欺かよ』 矢島由良とは顔絶対合わせたない。 けれども、これからこいつはかなり重要になってくる。 頼むから思い通りに動いてくれよ。 『振り込むってーと後払い?』 「せやな」 情報どのくらい渡すかは事前にはわかれへん。 その時々でのさじ加減は割りと重要。 『情報もらうだけもらって、振り込まねーかもよ?』 「………」 騙しとられるのはお前の方ってか。 モラルの欠片もないこいつのことや、十分ありえる。 けど、俺の目的はお小遣い稼ぎちゃうからなぁ。 こいつが"bat"潰れるように動いてくれたら、それでいい。 ただし、あまり金に無頓着なのも怪しまれる。 俺が情報を渡すメリットが他にあることがバレてしまう。 「ほな前払いにしよかな。もらえた金額で渡す情報調節するわ」 『あー、そういう系ね……ちなみにどのくらいの情報でいくらぐらいすんの?』 「例えば、どないな情報が欲しい?」 『じゃあ、"dog"の総長が出掛けてて溜まり場にいない日って情報だったら?』 「………3000円かな」 『…安いのか高いのかわかんね』 「安い方やで。調べやすいし」 ここに、誰と一緒に出掛けるかとかいう情報を加えたら、相手によってまた値段が変わるけど。 そして、今"dog"について聞いてきたってことは、"bat"が次狙うのは"dog"と見てほぼ間違いない。 「まぁ俺からの用はこんなもんや。口座はまたメールするから、よろしゅうな」 『まじで振り込み方式かよ』 不服そうな矢島由良を無視して、一方的に通話を終了させる。 画面の暗くなったスマホをぽいっとベッドに投げ捨てる。 これ、櫻井弘人が知ったら即破門やろな。 別に"bat"が潰れるまでバレへんかったら問題あれへんけど。 あくまでお仕事ですから [*前へ][次へ#] [戻る] |