情報屋、やってます。
5
「ねぇ、とーやくん。俺ともメアド交換しないー?」
「お、それはなかなか魅力的なお誘いやな」
「魅力的?」
「総長さんと交換するよりよっぽど有益やっちゅーこと」
「は?」
「実質チーム動かしてんの、あんたやろ?」
ということはつまり、"dog"と情報の取り引きする時は、必ずこいつが出てくる。
それなら、連絡先知っといた方がより情報を取り引きしやすくなる。
こんな嬉しい話はない。
「……情報屋って怖いねぇ…」
怖いか。まぁ、そーかもな。
「お…俺、無益かな…。いや、でも…後悔はさせないよう頑張るから!うん、せっかくお前に巡り会えたんだし!」
でもな、あんたんとこの総長さんのが怖いわ、明らかに。
何考えてるんか全くわかれへん。
考えどころか言うてることすらわかれへんてどーゆーこと。
無益とか以前に怖い、とにかく。
なんでバカ相手にこんな手ぇ焼かなあかんの…。
「はぁ…櫻井さん、あんたが総長やったらええやん…やりづらくてしゃあないわ…」
「はは、むりむり〜。人望が違うもん」
確かに、"dog"の総長さんは信頼できることで有名や。
せやけど…俺はどうも納得できひんねん。
「なんでこんなアホのもとに人が集まるんや…」
不思議で不思議でしゃあない。
なんでチームまとめてへんような総長が信頼できるとか言われてんねん。
「あほ?それっていい意味か?それとも悪い意味?」
「アホにいい意味あるわけないやろ!」
こんなんやからアホ言われんねんアホ!!
このエアークラッシャーの長所てもうポジティブなとこだけちゃう?
いや、そのポジティブですらいきすぎて欠点になってしもてる気ぃするわ。
…頼むからその顔やめてくれ!
お前みたいなでっかい男がしょぼんてしてるといたたまれへん!
「とーやくんさ、あんまうちの総長バカにするようなら、ちょーっと痛い目見させるよ?」
へぇ、ボコるってことか?
櫻井弘人が、俺を。
へぇ。
「ま、勝手にしたらええんちゃう」
「なんでそんな他人事なわけ…」
「どーでもええねん。実際簡単にボコられるとも思えへんし」
「はあ?舐めてんの?」
「俺、軽症程度で逃げ切る自信あるで?」
「ちっ、うっざ。俺のことまでバカにすんの?」
おい、本性出てもうてるけどええんか。
「そっちが俺のことバカにしよるから、お返ししたっただけや」
「いつバカにした」
「さっき。俺が大人しくボコられるような弱い人間やと思うとるやろ。あったまくるわ」
「だって、所詮情報屋なんて力じゃ叶わないでしょ」
「ほーら、バカにしてるやん。俺かてそれなりに動けんねん。運動はできる方やで」
「…うっそだぁ」
なんでみんな、情報屋=引きこもりオタクてイメージつけんねん。
電子機器類得意なだけやのに。
「なんならバク転でも見したろか」
「え、バク転できんの?」
「まあな」
体操やってたし。あとは空手もやってた。
体操は、母親が、自分が見るの好きやからって俺に習わせてん。
空手はくそ親父が段だか持ってるらしく、気づいたら習わされてた。
せやから、まぁまぁ自信あんねん。
もちろん勝てるとは思てへんけどな。
いくら高校生のチーム言うても、そこのトップにおれるのはかなり力のあるやつだけや。
こんなアホでも、こんなチャラ男でも、やっぱ力は確かなはず。
ま、警戒しとくにこしたことはないか。
「あ、で、さっさとメアド交換しよーや」
「あー、はいはい。airdropね」
ほんま総長と副総長とのこの違いはなんやねん。
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