風の中
急転直下 1
被害者さんを部屋まで送り届けて、風紀室まで戻る。
中に入ると、長谷川さんが顔を上げた。
相変わらずイケメンっすね!
「北原、来い」
「うす!」
急いで長谷川さんの近くに行く。
「ほんとに怪我はねぇな?」
「見てのとおり、かすり傷ひとつありません!」
「そうか…よかった…」
長谷川さんはため息をふーっと吐いた。
「北原、よく頑張ったな。お手柄だ、すげぇじゃねぇか」
「――!!…うす!!あざます!!」
ああああ、俺もうこの言葉だけで1ヶ月は飯抜きでも生きてける!…気がする!
超嬉しいどうしよう。
明日もがんばろ!
そっから1ヶ月、まさか飯を食わずには生きていけなかった。
むしろガッツリ食った。
…まあ、あれだ。
飯抜きでも生きてけるってのは言葉の綾だよ、綾。
それは置いといて、俺は1ヶ月で強姦現場に6回も立ち会ってしまった。
そして6回とも強姦魔たちを捕まえた。
長谷川さんにめっちゃ褒められまくって、マジで褒め殺されるかと思った。
いや、実際そんなに褒められてはないけど。
でも俺の中では、長谷川さんに1回褒められるのは、他の人に100回褒められるぐらいの勢いなのである。
空き棟を一人で回れるのはラッキーだ。
たくさん褒めてもらえるから。
強姦魔たちはそんなに手強くないし、数もせいぜい2、3人だから、まぁまぁ簡単にのせる。
こんなおいしい仕事はないね。
最初は長谷川さんも心配そうにしてたけど、だんだん俺も信用されてきたようで、最近では笑顔で褒めてくれるようになった。
部下を心配する心優しい長谷川さんも素敵だと思うが、微笑む長谷川さんもかなり素敵だ!
長谷川さんに微笑まれたら、こっちはニッタニタしてしまう。
副委員長からは顔が弛みすぎだと注意された。
まぁ、こんな感じで…ぶっちゃけ俺は調子に乗っていた。
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