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風の中
嘘の中のほんと
「北原」
長谷川さんに呼ばれて、体が強張った。
なんでかなー、もう。
そろそろ慣れないと。

机に近づくと、長谷川さんは心配そうな顔をした。

「お前、最近、何かあった?」

「…………」

答えは、決まってるじゃないか。

「何も、ないです」

「……嘘つくなよお前…」

「………」

ああ、そうだよ。
俺は長谷川さんに、嘘をついている。
何回も、何回も、騙して、逃げて。

こんな最低なやつ、いないっすよね。

「…もしかして、他のやつらに聞かれたくないことか?」

他のやつらじゃない、長谷川さんに一番聞かれたくないことだ。

「だったら、仮眠室行って、そこで話そう」
「………うす」

断れない。
これ以上長谷川さんの厚意無下にするとか、できねぇよ。

風紀室の隣にある仮眠室に移動する。
仮眠室にはベッドが2個あって、椅子も何個か置いてある。
高級ホテルみたいな感じ。

長谷川さんが椅子に座って、俺もその向かいの椅子に座った。

「で、何があった」

「え、と……」

ほんとのこと、ほんとのこと、…ぅー、と…、

「し、…失恋…してしまいまして…」
「しつ、れん…?」

嘘じゃない、よな、一応。
長谷川さんのことを諦めたのも、失恋に入るはず。
それが調子悪い理由になるかと言えば、いまいち疑問が残るけど。

でも、そのせいでしょげているのは確かだし。

「お前、好きなやつ、いたのか…?」
「……うす」

「へぇ……そうか…」

長谷川さんはなぜだか俯いた。
俺に好きな人がいたのが、そんなに予想外だったんだろうか。

「そんなに落ち込むぐらい、好きだったんだな…」
「……大好き、でした」

長谷川さんは更に俯いてしまった。

「まぁ…お前振ったやつなんて、忘れちまえばいいさ」
「………」
振られたわけではないけれど。

「新しいやつ、探せばいい」

「……それは、…たぶん無理、です。その人が、俺の中では唯一、なので…」

一番とか、そういうレベルじゃ、ない。
だって、俺の中には、二番も三番も存在しない。
長谷川さんしか、いなかった。

今は、その長谷川さんすら、いないけど。

長い沈黙が続く。
なんだか、微妙な空気になってしまった。

俺の恋愛話なんか、聞きたくなかったのかな。
申し訳ない。

「あの、話、聞いてくれて、ありがとうございました。心配かけて、すんません」

「いや、…こっちこそ、無理に話させて悪かった。…元気、出せよ」
「…あざます」
















また逃げてしまった俺を、誰か殺してくれないか



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