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風の中
真面目すぎ 1
…ー副委員長sideー…

午後6時半頃になると、風紀室に残るのは俺と長谷川だけになる。
いわゆる残業というものをしているわけだ。

書類の山を片付けながら、ふと、あの犬っころみたいな風紀委員のことを思い出す。

そういえば、最近早退とか欠席、多いな。

ちょっと前までは一度だって休んだことがないくらい健康そのものだったのに。

ずる休みとかではないことは確かだ。
本当に、顔色悪いし、表情固いし、元気ねぇし、正直1ヶ月くらい丸々休めと言ってやりたい。

あと、長谷川への態度が激変した。
少し目が合うだけでも嬉しそうな顔をしていたというのに、最近じゃあ、目を合わせるのを避けているようにすら思える。
長谷川に呼ばれた時も、小さな低い声で返事をするようになった。

何かあったのは、明白。

本人に何回か聞いたが、返ってくるのは何もないって言葉だけ。


というか、こういう時は、お前が動くべきだろう?


「長谷川」
「ん?」

長谷川がこっちを見てくる。

「お前、最近北原が変だってのは、さすがに気づいてるよな」
「………ああ」

「だったらどうして何もしない」
「………は?」
「何かあったのか、聞くぐらいしろよっつってんだよ」

「……贔屓は、しない主義だ」

そうそう、こいつの厄介なとこがこれ。
真面目すぎる。
頭が固いともいう。

贔屓を無くすために、委員全員名字で呼んでいる。
プライベートな話はほとんどしない。
委員がどんな手柄を立てても、これまた贔屓と捉えられないように、誉める時は一言二言で終了。

とにかく委員に対して平等に接することに努めている。

が、正直北原は別だ。

北原に対しては、ほんのちょっと甘い。

あんな犬っころみたいについてこられたら、そりゃかわいい。
平等を努めている長谷川だが、あいつのかわいさには負けたらしい。
きっと一番のお気に入りの後輩だ。

本人も、北原にだけ甘くなってしまうのは自覚しているらしい。
だから、なんとか平等に扱おうと努力している。

でも、本当は北原が心配で心配でしょうがないにちがいない。

「委員の悩み事聞くぐらい、誰も贔屓だとは思わねぇだろ」
「そう、か?」
「ああ」

「……わかった。明日ちょっと声かけてみる」


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あきゅろす。
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