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理解不能
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雷斗のアパートの近くにある牛丼屋で夕飯を済ませ、またアパートに戻るべく帰路についた。

「いっぱーい勉強しーたなー」

「一時間がいっぱいなんだ」

結局勉強するのに飽きた俺らは、あの後ゲーセンへと旅に出た。

楽しかった。

「ま、明日頑張りゃいいのよ」

「よく聞く言葉だけど大丈夫ー?」

「大丈夫大丈夫」

「勉強できないの、マ●オのせいじゃなくて俺らの意志の弱さのせいだよね」

「あ、気づいちゃった?」

てゆーか、俺のせいだわな。

だって、雷斗はまだ勉強する気あるもん。

邪魔しちゃ悪いのはわかるけど、うーん…雷斗と遊ぶの楽しいから、しかたない。

「そういえばさ、雷斗の部屋って何でゲーム機ないの?」

「ん?んー…あんま友達呼ぶこと仮定してなかったから」

あー、まぁ確かに雷斗って他人に踏み込まれるの好きじゃないっぽいからなぁ。

俺だけ特別、的な?
なんだこれ、超優越感。

けど、敢えて口には出しませんよ。
優越感は一人で楽しむものだと思ってるかんね。

「一人でゲームやるって選択肢はないんだ?」

「いや…携帯のゲームで十分かなって」

「ああ、なるほど」

アプリとか数えきれんほどあるしな。
まあ確かに十分か。

テレビゲームだと、テレビの電源いれてゲーム機本体の電源入れて入力切り替えして、って感じで携帯のゲームに比べたらかなりめんどくさい。

「でもやまと遊びにきた時は欲しいか。今度家からとってくる」

「そこまでせんでも、……あ、雷斗ん家ってアパートから近いのか!」

だって中学俺と一緒ってことは、それなりに俺の家とも近いわけで、つまり俺の家にそこそこ近い雷斗のアパートともそんなに離れてないってことじゃね。


「…歩いて1時間くらい」


「とおっ!そんなゲーム持って歩ける距離じゃないから!」

確かに中学の学区ってかなり広いけども!
まさか俺ん家と雷斗ん家って、学校挟んで対角線上とかなのか?

とにかく一時間ひたすら歩くとか無理無理!
雷斗運動部じゃないんだから。
いや、運動神経いいけどね!羨ましいねほんと!

「親が仕事休みの日なら車で届けてもらえるけど、……いや、ねぇな…」

まぁ、歩いて1時間の距離も車なら10分そこら……うん?

「…ないって?」
何が?

「うーん……うちの親ちょっと忙しい人らだから」

あ、雷斗の親の話聞くの初めてかも。

「そーなの?」

「おぅ。全然家帰って来ない」

「へぇ…大変じゃん」

「まあ……その分金たくさんもらってるっぽいし」

雷斗の家って実は金持ちなのか。
雷斗見てる限りではそんな感じしないんだけど。

「金持ちなのに傲らないって、さすが雷斗」

「傲るとかなんじゃそりゃ。あくまで金持ちなの親だからね?」

親が金持ち…つまり、

「小遣いとかたくさんもらえんじゃねーの?」

「家帰って来ないから小遣いもらう機会なかった。たまーに帰ってきた時にはドカーンてくれたけど」

そうか、機会が少ないんだな。
一気に半年分の小遣いくれるとかそんな感じなのかねぇ。

「ドカーンて、どのくらい?」

「んっと……10万、とか…」

「うええええ!?」

小遣い10万とか、はああ!?

ゲーム買いまくるわ!!

「でも飯代に消えた」

「ほ、お、飯自分で買ってたの…」

なんかゲーム買いまくるとか思ってごめんなさい。

「ふはは、俺の親マジで育児放棄のレベルだったんだわ」

雷斗って、意外に苦労してんのなぁ…。
俺とは、全然世界違う。
俺ん家は結構ケチ臭くて、高校んなっても小遣い1000円とか超ハードな生活を強いられていたりする。
けど、飯はちゃんと作ってくれるし、家に帰れば当たり前みたく「おかえり」って言われる。

家に夜一人ってどんな感じなんだろ。
怖いのかな、寂しいのかな、それとも慣れちまえばそんなの平気?

もしかして、だだっ広い家に一人でいるのが辛くて、雷斗は狭いアパートなんかに引っ越してきたのか?

「ま、小学校ん時までは高校の姉ちゃんいたから全然大丈夫だったけどね。姉ちゃんいる間は飯も作ってくれたし」

「え、雷斗って姉ちゃんいたの!?」

「うん。もう社会人。歳6つも離れてる」

「初知り…」

歳6つも…いや、俺だって撫子と5つ離れてたっけ。
小学校の時までは、ってことは…中1の時は姉ちゃん高校卒業した後か。
つまり、雷斗を一人置いて家を出たわけだ。
でも、もし短大とか行って自宅通学不可能とかだったらしゃあないよなぁ。

…俺、雷斗のことなんも知らねえや。
いっつも俺のことばっか喋ってた気がする。

つか、雷斗があんま話してくれなかった、のかな。

「雷斗って、自分の話するの嫌い?」

「嫌いっつーか、……自分のこと知られるの、ちょっと怖ぇかなぁ、みたいな」

うまくいえないけど、と言って、雷斗は笑った。

確かに雷斗はあんま心オープンな感じではない。

「でも、話してくれたじゃん」

俺には、話してくれた。


「やまとなら、なんか怖くないかもって、思った」


……あー、もう、何この超かわいい子。


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