理解不能
やりすぎ禁物 1
あー、夏が終わってしまった。
早かったなー、ヤダなー。
無事直ったらしいエアコンがかかった教室で、桑田センセーが提出物を集めている。
「通知表忘れたやつ今日放課後家まで取りに戻れ」
「っ鬼ー!!」
やまと、それはお前が悪い。
「あとは、特に連絡事項はねぇかな。…あ、そうだ」
なぜだか桑田センセーと目が合った。
「雷斗、首大丈夫か?」
桑田センセーわざわざ掘り返してんじゃねぇよぉぉおお!!
忘れかけてたのに!!
「あ、はは、あー、もう…全然平気っつーか、あはははは」
チラリとバカ瀬を見ると、机の上で頭を抱えていた。
「お前ら、喧嘩すんのも大概にしとけよ。そのうち生徒指導入れなきゃならんくなるぞ」
「……はい…」
「閑は?わかったか?」
「わーってるよ……」
教室の中はわけがわからないという声でざわついていた。
「なになに、なんなの桑田っち!」
やまとが身を乗り出しつつそう聞く。
だからもう聞くなって!!
「いや、終業式のあとな、雷斗が閑に首噛まれたっつってよぉ」
「………」
ゆっくりゆっくりとこちらを振り返ったやまとの目は、これでもかというくらい見開かれていた。
ついでに口はポッカリと開いている。
「ほら、やまと。そろそろHR終わりにするぞ」
「……ういーっす…。きりーつ」
ガタガタと席を立つ音が教室を満たす。
「ありがとーございましたー」
やまとの号令に続いてみんなテキトーにあいさつする。
さて、放課だ。
わらわらとみんなが教室を後にする中、やまとはまっすぐこっちに来た。
「雷斗!」
あー、頼むから聞かないで…。
「どーゆーことよ!」
…聞いちゃった。
「…いや、…まぁ…」
「噛まれたの、どのへん?」
「…このへん、ですかね…」
俺が首の噛まれたあたりをさすると、やまとがそこを覗き込んでくる。
「そんな見ても、もう傷治ったからなんもないぞ」
「………傷?……傷んなったの!?」
「…いや、傷っつか、ちょっと血ぃ出たぐらいだし、たいしたことではない…」
「…………あらまぁ、閑ってば愛情表現激しいね」
「愛情とか気持ち悪いこと言うなよ…」
「で?何で噛まれたの?」
「それが、俺もよくわかんねぇんだわ」
「はぁ?」
「マジでいきなり噛んできやがったの」
「……獣かよ…」
やまとは少しの間、手を顎に当てて考え事らしきものをした。
「…雷斗、ちょっと先帰ってて」
「え?」
「閑から事情聴取する」
「……いやいやいや!やめとけって」
「雷斗も一緒にしたい?」
「まさか!」
「じゃあ、な?」
「………」
まぁ、いいや、もう。
俺知らない。
「わかった、帰ってる。…でもマジで、俺なんとも思ってないから」
「…ほほお、閑のことを庇うとは…」
「庇ってねぇよ!」
バッカじゃねぇの!?
「うん、もうバカ瀬とか、シバいといて!」
「仰せのままにー!」
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