哀色
別れ
使用人の人に部屋に通してもらう。
「どうぞお入りください」
もう随分見慣れた部屋に入ると、真っ先に優のお兄さんと目が合った。
「成松くん…」
そして、その横のベッドには、顔に白い布をかけられた、優がいた。
やっぱり、もう…、
ふらつきそうになる足を前に進め、優の傍に行く。
「ゆう…」
ベッドの横に跪いた瞬間、目頭がじんと熱くなった。
次いで、涙が溢れてくる。
何泣いてんだよ。
俺には、泣く資格もなければ権利すらないのに。
ちくしょぉ、
「ちくしょぉっ…!」
ごめん、ごめんな、優。
こんなやつでごめん。
俺、お前に何もしてやれなかった。
何も伝えられなかった。
なんで、今日なんだ。
せめて明日だったら、まだ、傍にいれたのに。
いや、そもそも生徒会のために戻ったりしなければ。
なんて言ったら、お前は失望する…?
自分で選んだ道に、文句言ってんじゃねぇよって、そう思うかな。
でも、俺は何よりもお前が大切だったから、お前の傍にいたかった。
生徒会の仕事なんか放棄して、お前の傍にいればよかったって、思ってる。
早い、早いよ。
死ぬには、早すぎる。
いろいろ、やり残したことだって、あるだろ?
まだ見てない世界だって、あるだろ?
たった16歳のお前が、わざわざ死ぬこと、ない。
すっかり冷たくなった手を、そっと握る。
もう、どんなに足掻いたって無駄だと思い知る。
優は死んだ。
認めるしかない。
最後くらい、しっかりしろ。
優、今までありがとう。
愛してる。
さよならと言った声は、君に届きましたか
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!