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逆転のち逆転
【S】アプローチ(2)
「俊希さん、それ一口ください」

昼休み、先輩たちのクラスにお邪魔させていただいている。

俊希さんの食べかけのパンを指して言うと、俊希さんはすごく嫌そうな顔をした。

「やだ」

っ、断り方が、くっ、かわいいっ…。

俺が内心身悶えていると、先輩が助け船を出してくれる。

「俊希けっちぃこと言うなよー。ほら秋一、俺の食うか?」

が、方向が間違っていた。

そっちじゃあないんです。

「ありがとうございます、でも俺俊希さんのパンがいいです」

ここは空気を読んで、食べかけの、とは言わなかった。

「だってさ、俊希。くれてやれって」
「……えー…」

今度は方向が正しい。
先輩グッジョブ。

俊希さんはまだ口をつけていないところをちぎって、俺に差し出した。

「ほら」

「……………」

「……………何か文句あんのか?」

わかっているくせに。

「…俺の一口はこんなに小さくない」

「これで我慢しろバカ!」

不服ではあるが、仕方ない。
あまり出すぎた真似をして嫌われるのも避けたいしな。

俊希さんからパンの欠片を受け取り、口に放り込んだ。









部活が終わった後、ちゃっちゃと着替えを済ませ、まだ着替えている途中の俊希さんの後ろに黙って立った。

やっぱりこの背中は兵器だ。

陶器のようになめらかな肩に、両手をパンッと置くと同時に。

「わっ!」

「うわっ!!」

俊希さんの肩がビクッと震える。
すごく可愛い。

ついでに両隣にいた先輩たちも驚いてビクッとしていた。
全く可愛くなかった。

「ちょっ、秋一!」

「驚きました?」

「驚くに決まってんだろ!?てか手ぇどかせ!」

さりげなくずっと肩に置いていた手を外される。
俊希さんの生肌の感触は一生忘れません。
さらば俊希さんの生肌。

「俊希さん、これから二人で帰りませんか。1週間置きに」

「また出た何だその1週間置きって!」

「あ、毎日がよかったですか」

「ちげぇよバカじゃねぇの!?」

これはツンデレで合ってるだろうか。
きっと合ってる。

「なんだ俊希、秋一と帰るのかー?」

よし、先輩が会話に入ってくれた。
俊希さんは先輩に弱いからな。

「いや、ちげぇから」

「せっかく秋一がなついてくれてんだから、一緒に帰ればいいじゃん」

「だーかーら、嫌だっつってんだろ!」

「何でそんな嫌がるかなぁ。お前秋一のこと嫌いなの?」

「え、そうなんですか」

俊希さんのこれはツンデレなだけだとわかってるからこれっぽっちも精神的ダメージは食らっていないが、あえてシュンと落ち込むフリをしてみる。

「っ、ああもうわかったよ!1週間置きだからな!」

「ありがとうございます!」

よっしゃ。


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あきゅろす。
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