逆転のち逆転
【S】音沙汰なし(2)
「俊希ー!?」
「うっわ、マジ!?」
もろ顔面でボールを受け止めた俊希さんは、顔を抑えて蹲った。
避けられないところが可愛すぎる。
でも、痛い思いさせて申し訳ない。
「すいません、俊希さん!大丈夫ですか!?」
白々しい?なんとでも言え。
俊希さんのもとへ駆け寄って、膝を折った。
「いってぇ……ふっざけんなよ秋一…」
もう一度、すいませんと謝る。
俊希さんは確かに見た目に反して力は強い。
でも、サッカーでは俺の方が上手い自信があるし、俊希さんがあのスピードのボールを避けられるとは思わない。
結構距離近かったしな。
顔を覗きこみ、顔をおおっている手をそっとどかす。
ああ、手は俺よりでかいかもしれない。
ちょっと悔しい。
「俊希鼻血出てんじゃーん!」
心配して近寄ってきた部員の一人が声をあげた。
鼻血とか、なんて思い通りにことが運ぶんだろう。
「俊希さん、手当てしましょう」
俊希さんの手を引いて立ち上がる。
俊希さんもまた手で顔、特に鼻のあたりを覆ってから立ち上がった。
「秋一、マネにやらせとけば?」
先輩がそう言うが、マネにやらせられるわけがない。
俊希さんの鼻に指一本足りとも触れさせるものか。
「いえ、俺の責任なんで、俺がやります」
「さっすが秋一。ストイック」
「つーか、秋一がパスミスるなんて珍しいよね」
「俺そんなにサッカー上手くないです」
「まったまた」
ミス?
いいや、これ以上ないくらいのベストシュートだったさ。
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