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逆転のち逆転
【T】形勢逆転(1)
冬が近づき、少し肌寒くなってきた。
集合の掛け声に、腕をさすりながら部長のいるベンチへ向かう。

ゾロゾロと部員が集まったところで、部長がよしっと声を発した。

「今日の部活はこれで終わります。あざっした!」

「「あざっした!」」

終わった終わった。早く着替えて早く帰ろ。
と思って踵を返したところで、宮間、と可愛らしい声がかかる。

振り向くと、マネージャーがすぐ後ろに立っていた。
可愛らしい顔立ちをしたその子は、男子部員にはなかなかの人気である。
それでも恋愛にはあまり興味がないのか何なのか、隣に特定の男を連れているところは見たことがない。

「ちょっと話あるんだけど、このあと時間ある?」

小さな声でそう言われ、少し意外に思いながら頷いた。

「ありがと。あ、着替えてからでいいよ。寒いでしょ」

にこりと笑うと、マネージャーは俺を追い越して小走りで他のマネージャーのところへ駆けていった。

マネージャーを追いかけて前を向いた視線を、もう一度後ろへ戻す。

同学年の部員とグランドへ戻っていく秋一の後ろ姿を一瞥してから、男子更衣室へと歩を進めた。
自主練か、寒いのに頑張るなぁ。










制服に着替えてから、手ぶらで更衣室の外に出る。
マネージャーの姿は見当たらない。
まだ着替えてるんだろう。

すぐ目の前にあるベンチに腰かけて、グランドを眺める。
4つの影が広いグランドの片隅で、ボールと戯れていた。
いいなぁ、秋一と自主練できて。
俺もしたいけど、自分の下心が見え見えすぎてとてもできない。

はぁ、とひとつため息を吐いたところで、後ろからドアの開く音と砂利を踏む音が聞こえた。
お待たせ、という声に、立ち上がってから振り返る。

「裏で話そっか」

軽く微笑みながら頷いた。
ひきつってなければいいけど。

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あきゅろす。
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