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逆転のち逆転
【T】もしかして夢?(2)
しかし秋一がそんないい子なわけなかった。
俺が惚れたのは一癖も二癖もある秋一。
まるで仏様のような秋一なんて秋一ではない。

ミニゲームにて。

あぁ、パス来るかなぁ、なんてのんきに構えていたのがいけなかった。
なんでこの至近距離でパスするのにそんな踏み込んでんの?とか思った時にはもう既に遅かった。
秋一の足が勢いよく蹴り出したボールは避ける間もなく俺の顔面に、クリーンヒット。

「俊希ー!?」

「うっわ、マジ!?」

鼻柱にとてつもない痛みが走り、顔を抑えてその場に蹲る。

なんだ秋一お前、俺に恨みでもあんのか!
…あぁ、あったわ、超あったわ。

近くにいた部員がワラワラと集まってくるのが気配でわかる。
その中には秋一もいたみたいで。

「すいません、俊希さん!大丈夫ですか!?」

白々しいなオイ!!

「いってぇ……ふっざけんなよ秋一…」

もう一度、すいませんと謝られる。

まぁね、確かに俺が悪いよ?
でもこんな陰湿な方法で仕返しすることねーだろ!
お前がここまで根性ねじ曲がったやつだとは思わなかった!
けれど悲しいかな、俺の秋一に対する想いは一向に薄れる気配を見せなかった。

秋一が俺の顔を覗きこみ、顔を覆っている手をどかす。
ああ、俺より手ぇ小さい。
めちゃくちゃ可愛いわ。

なんてことに気を取られていたから、俺が顔を覆っていた一番の理由が頭から抜けていた。

「俊希鼻血出てんじゃーん!」

部員の一人が声をあげたことでハッと気づく。
必死で隠していた鼻血はいつの間にか皆さんとご対面していた。

ちくしょう、どこまで俺を貶めれば気が済むんだ!

「俊希さん、手当てしましょう」

秋一が俺の手を引いて立ち上がる。
仕方ないから俺も空いてる手で鼻のあたりを覆ってから立ち上がった。

「秋一、マネにやらせとけば?」

部員の一人がそう言うが、秋一はキッパリと一言。

「いえ、俺の責任なんで、俺がやります」

例えわざとボール当てたとわかってても、これはかっこよすぎる。

「さっすが秋一。ストイック」
「その秋一がパスミスるなんて珍しいよね」
「俺そんなにサッカー上手くないです」
「まったまた」

ミス?

いや、絶対あれはベストシュートだった。


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