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逆転のち逆転
【T】甘やかすから
「キモいんだけど…」


俺の好きなあいつに少しだけ似ているその同級生は、そう言うと俺に背を向けた。

一人残された空き教室で、俺は拳を握りしめた。









放課後、部活までのちょっとした時間に告白したあと、すぐに部室に向かった。

割りと、平気だった。

あいつさえ目に入れなければ。

部室に行った時にはもうあいつはグランドに行ってたからセーフだった。
部活の間も、できるだけ避けた。

今日だけは、顔を見たくなかった。
別にあいつのせいじゃないけど。

でも、最後の最後で油断した。

さぁ、帰ろうとした時に、あいつと目が合ってしまった。

「俊希さん、おつかれさまでした」

その真面目そうな顔に微笑みを浮かべて言ったあいつは、俺の気なんて何も知らないで、部室を出ていった。

急に、一人になりたくなった。

友達に先に帰っていてくれと頼み、最後の一人になるまで部室の長椅子に座っていた。

一人になったと同時に、泣いた。

辛かった。

高校に入ってから、振られたのは、これで二回目。

一人目は、顔が少し似てる子だった。

二人目は、性格が少し似てる子だった。

どっちもダメだった。

両方とも、気持ち悪いと言われて逃げられた。

あいつにも、そんなふうに、気持ち悪がられるんだろうか。

そう思ったら、もう、涙がとまらなかった。



どれぐらい経っただろう。

そう思って時計を見てみれば、さっきから10分しか経ってなかった。

まだ、帰る気にはならない。

目元を手のひらで拭った時だった。

部室のドアが、カチャリと音を立てて開く。

覗いた顔に、心臓がヒヤリとした。



「………俊希さん…?」



広瀬秋一、俺の、好きな、あいつ。

「え、俊希さんどうしたんですか」
俺が泣いているのに気づいたんだろう。
少し慌てた様子で部室に入ってくる。

「お前、こそ、どうしたん、だよ、」

みっともなく声が震えた。

「ちょっと、携帯忘れて」

携帯忘れるとかバカだろ。
って、笑って言えればいいのに。

喉が詰まって言えなかった。

「俊希さん、何かあったんですか」

秋一は俺の横に腰かけた。

もう、さっさと携帯持って帰れよ。

構わないでくれ。

今お前に心配されるのが、一番辛い。

「なんも、ねぇよっ、」

「なんもなかったら、そんな泣かないでしょ。泣かせたの、誰ですか」

お前だよ。

なんて、言えるわけもなく。

「フられた、」

「……え?」

「フられたんだよばーかっ!」

ヤケになって怒鳴った瞬間、何かが俺の体を包んだ。


「――っ、」


「大丈夫です、俊希さんのことわかってくれる人は、必ずいるから」

秋一は俺をそっと抱き締めながら、そう耳元で囁いた。

シトラスの香りがふわりと鼻を掠める。

「もう、忘れましょう。だから今日は、俺に――」



気づけば押し倒していた。



「………えっ?俊希さ、いや、ちが、」

「ごめん、秋一」

今日だけでいいんだ。

一回だけで、いいんだ。

きっと、いくら待ったって、お前は俺なんかを受け入れてはくれないだろうから。

もう、これで、諦める。

最後に、少しくらい、贅沢したっていいだろ?


「ごめんね」


小さく謝ってから、そのキレイな首筋にかぶりついた。











優しくするのが悪いんだ

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あきゅろす。
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