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逆転のち逆転
【S】告白(2)
どこを探すかだけど、とりあえず部室周り一周してみるか。

と思って部室の裏に回ったら、すぐさま見つけた。

影がふたつ。

ひとつは俊希さんで、もうひとつは、サッカー部のマネージャー。

その影はピタリとくっついていて、ああ、キスしてるのか。



「何してるんですか」



気づいたら声を発していた。

俺に気づいたマネージャーはビクッと体を揺らして俊希さんから離れた。
俺はお構い無しに二人に近づく。

「広瀬くんこそ、なんで、ここに、」

動揺しているマネージャーの目の前に立ち、その腕を掴んで、その口にキスを落とした。

「っ、」

俊希さんとの間接キスいただきました。

マネージャーはバッと手を振り払って、どこかへ走っていった。

その背中を見送りながら、悲壮感に浸る。
俊希さんがモテてモテて仕方ないのは理解できるが、だからといってこんなこっそり浮気されるなんて受け入れられない。
正直ショックだ。3階建ての建物から飛び降りてもいいと思えるぐらいには。

ゆっくり俊希さんに視線を移す。

部室の部屋から洩れた明かりだけでは、表情までは読み取れなかった。


「酷いじゃないですか」


「………………」

俊希さんは頭をガシガシと掻いた。

「別に、付き合ってるわけでもねぇのに、てかお前もなんかキスしたじゃん今」

「――え?」

今なんて言った?

「もう一回言ってください」
「だから、キスしたじゃんって」
「その前」
「別に付き合ってもないのに」


「…そうなんですか?」


「……は?付き合ってねぇだろ」

「……それは、……知らなかった」

「はぁ?お前、俺と付き合ってるつもりだったの」


「はい」


「え、いやいや、付き合ってくれなんて言った覚えも言われた覚えもねぇよ!」

……まぁ確かに言ってはいないが。

「心のどこかで繋がってると信じてました」

俊希さんの口がポカンと開く。
つまり、お前頭イカれてるだろ的な表情をされた。

「ご覧の通り全く繋がってないけど」

「残念です」

そうか、付き合ってなかったのか。
てっきり勘違いしていた。
さっきよりも断然ショックだ。

だって、こないだあんなに甘いキスをして、体を繋げたばかりなのに。
俊希さんにとって、あの行為にはどんな意味があったんだろう。
別に、意味なんてなかったのか。

「じゃあ俺たちの関係って、セフレですか」

「はぁ!?違うだろ!!」

恋人でもなければセフレでもない?

「もしかして、単なる性欲処理器……」

「違う違う違う!!お前ほんとバカ!!」

「じゃあ何なんですか」

「……………」

俊希さんは黙り込んでしまった。
もともと俺は気が長い。
いくらでも待ってやる。

そして、

「わかれよ……」

しばらく経ったあとに俊希さんが言ったのはこの一言。

「……何を?」

やっぱ心は繋がってなかった。

俊希さんは俯きがちに言葉を続けた。


「お前のこと、ずっと好きだった…――」


「それは知ってます」


「………………………はぁぁあ!?知ってたの!?」

「はい」

好きなのは知ってる。
じゃなきゃ俺だって勝手に付き合ってると思い込みはしない。

「……なんなんだよもう……お前ほんとよくわかんねぇ…」

俊希さんはガックリと肩をおとした。

俺だってよくわからない。


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あきゅろす。
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