短編(戦国BASARA) 本願寺姫君伝説(女主/本願寺) ある早朝。 本願寺は例の如く異様なまでの熱気に包まれていた。 「腹筋二百回終わりましたであります!」 屈強な僧服の男達が集団で汗水たらして体を鍛えている。 その先頭、逞しい体がひときわ目を引く男がいた。 「今度は背筋じゃ!それ二百回ぃ!!」 「了解であります!!」 その男――本願寺顕如のひと声で、男達はうつ伏せになり鼻息荒く運動を始めた。 …しかしそれも、すぐに止めざるを得なくなった。 本堂の方向から、猛然と駆けてくるものがあったのである。 「いい加減になさりませーっ!!!」 膝に手を付き、ぜぇ、はぁ、と少女は息をついている。 「どうした女主人公!」 顕如の声に、少女はきっと眦を釣り上げ噛みついた。 「どうした、じゃありません!何度も言わせないでくださいませ!何故よりにもよって今なのです!?今日もこんなに早く目覚めてしまったではないですか!!」 「女主人公、早起きは三文の得と言うではないか!」 「鶏も鳴かぬ時刻では逆に三文以上の損ですわ!」 大体、と女主人公は前置きした。 「こんな時刻に、ご近所様方にご迷惑だと思いませんのっ!?」 ただでさえ余所に攻め込まれ戦ったりして不安を与えているのだ。 これ以上迷惑を掛けるわけにはいくまい、と女主人公は思っていた。 「兄様方も!何故父様をお止めしないのです!?」 追及された男達は、拳を固め頷いた。 「うむ、しかし早朝の鍛錬は筋肉に良いからな!」 駄目だこの脳筋共、と女主人公は思ったがあえて無視した。 この兄達では頼りにならない。 (昔はもっと理性的な方々でしたのに…) 時の流れは残酷だ、と女主人公は密かに嘆いた。 そんな女主人公にお構いなく、顕如は笑い飛ばした。 「なんの、そんなもの金で解決すれば良かろう!主も拙僧の娘ならそれ位に思え!」 ガッハッハと高らかに笑う。 その瞬間、何かが女主人公の奥でぶちりと音を立てた。 「…なに……なら……さ…で…」 「ん?」 女主人公は近くの瓶を掴み、 「ぬおおっ!?!?」 顕如めがけ中身をぶちまけた。 「そんなにお金が良いならば、お金を娘になさればいいのですわっ!!!!」 空になった瓶を投げ捨てると、女主人公は 「もうこんな家、出て行ってやりますわっ!!」 そう叫び、門を開き飛び出していった。 〜あとがき〜 こうして女主人公のストーリーモードが始まったのであった(←マテ そんな訳で、まさかの本願寺が来ました! いやあ、思いつきって恐ろしいね!! 製作時間一時間ちょいですよ! そしてここから言い訳という名の補足入ります。 その@ 女主人公の兄達が出てきましたが、コイツらは史実です。 それぞれ教如・顕尊・准如と言って、教如は後の東本願寺、准如は西本願寺作った人です。 息子がいるなら娘がいてもいいかな〜とか考えました。サーセン。 そのA 最後の「そんなにお金が良いならば〜」は元ネタがあります。 史実で、前田利家は結構な守銭奴だったのですが、ある日戦をしようと思ったら金はあるのに人がいませんでした。 さあ大変。 そこでまつさんが金の入った袋を利家に投げつけ一言。 「もう知りませぬ!そんなに金があるなら、金に武器を持たせれば良いではありませぬか!!(BASARA風意訳)」 普段から人材を育てず金を貯めてばかりからこうなるんだ、という皮肉ですね。 まあ、あくまでこれらの話は暦のうろ覚えな記憶をもとに書いてますので、あまり本気になさいませんよう。 それではそろそろ幕引きとしましょうか。 では皆様、"あなたの旅路に幸多からんことを"! [*前へ][次へ#] [戻る] |