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紅掛空色*壱
べにかけそらいろ
紅掛空色



青々と草木の茂る季節。

土御門にある安倍の屋敷の簾子には柔らかな日差しが入っている。

その木漏れ日の中で一人の幼子が戯れているが、あたりには家人の姿はなくただ一人、鞠を転がし遊んでいた。

飽きもせずに、転がる鞠を追いかけてはまた弱く突き、転がしては追いかけている。


そのうち、少し強く突いた鞠が、簾子の淵へ向かって転がっていく。

幼子はその鞠を夢中になって追いかけていくが、手の届く寸でのところで鞠が視界から消え、行き場を失った手が宙を掴み、がくんと体が宙に浮いた。
しかし、強張らせた体に衝撃はなく、鞠が地面を跳ねる音を聞き、硬く閉じた目を開けると見知った顔が自分を抱えていた

「…れーん。」

満面の笑みで手を伸ばされれば、子供を抱いた肩の力が抜けた。



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