亀車って乗れるらしいね
おっさんズは正しかった。
アレ止めるのはちょっと無理だ。
亀車(うおおまじでカメ!)にまとわりつく鳥の一体をこっちで引き受けながら思った。つーか俺S.E.E.S.でも特捜隊でも最弱だったね攻撃力的な意味で! ペルソナ呼べなきゃ本気で役立たずなことを今思い出しました。泣きたい!
「下がれヒュー! お前じゃ追い付くの無理だ!」
両手の木刀を振り回して、できた隙に体当たり食らったヒューバートに言った。アスベルも下がらせた方がいいかな…辛うじてソフィが届くくらいか。
ああくそ、やっぱり俺個人が他の何かを傷つける方法を持つのは嫌だとか、単なる甘えだったかな。イカロスを呼べなくてどれだけ怖かったか忘れたつもりなかったのに。
魔物を倒して親父さんに怒られてるアスベルを横目に、俺はちょっと落ち込んでいた。
「ゆきみち?」
ピンクの髪の子が俺の顔を覗き込んできた。ソフィという名前になったらしい。ああもうほんと可愛い…稲羽市の天使こと菜々子のようだわ。癒し。
横を亀車が通った。…いいなぁあれ…乗りたい。甲羅の上寝転がりたい。
「どうしたの? 行きましょう?」
もうみんな帰るっぽくて歩きだしていた。うん…俺一人で静かに悩みたい。でもアスベル放置は怖すぎるいろんな意味で。
俺も歩き出した。そして考える。
…帰りたくないのかな、俺。稲葉に。
…帰りたくないなんて嘘。でももうラントに未練ができた。
何より俺はきっと、こういう非日常を望んでいた。
「…はは」
贅沢な自分に笑えた。きっと今夜あたりさみしくて泣くくせに、俺はこの状況を喜んでいる。
なにせ生きている実感と命を懸けることがニアリィイコールで結ばれてしまっているのだ。
(どんだけ殺伐とした学生時代だ)
「ゆきみちー! 早くー!」
アスベルが呼ぶから駆け足になった。
風に煽られた髪を払う。もう一年は伸ばしっぱかー…あーもういい加減切りたいな、でも毛先ちくちくするから切りたくないんだよ。
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