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めりくり。
※ED後のいつか。
※管理人エフィネアの暦分かりません。雰囲気で読んで下さい。

クリスマスってのはキリストの生誕祭だ。日本じゃサンタのが有名だけど。こっちにも当然そういうイベントはあって、でも流石に十二月二十五日ではない。つーかグレゴリオ暦じゃないしな! あれ、名前合ってっかな。
とにかく年末が忙しいことを承知で、俺はクリスマスパーティの招待状を送った。まー王子は無理だろ確実、とは思ってたんだけど。






「パスカルも無理とかあり得ない……あいつ仕事イコール趣味じゃん確実……フェンデル国境に一番近いのってラントなんだから来いっつの」
「ゆきみち、パスカルは?」

開けっぱなしの戸をくぐって、ソフィが言った。俺は手近の机に手紙を放って溜め息を吐く。

「だーめ、パスカルも不参加。王子はまぁいい、教官も今超忙しいからよし、ヒューは後で構い倒すという名の八つ当たりを兼ねた俺の癒しになってもらうとして、シェリアが掴まらないのは赤毛の天使業が忙しいわけだから仕方ないとして、なんでアスとパスカルまで来れないのさ」

特にアスなんか自分ちでパーティするってのに、王子がお城のパーティに呼んじゃったもんだからそっちを優先しやがったのだ。そっちの返事出す方が早かったらしいけどね、パーティの準備始めてから話通そうとした俺が悪いけどね!
机にばったり伏せてぐずり始めた俺を見て、ソフィが沈んだ様子で言った。

「……せっかく、久しぶりにみんなで会えると思ったのにね」
「うんもうマジそこは頑張ってほしかった」

俺いつ戻されるかわかんないのに。とは言わない。

「パーティ、中止になっちゃうの?」
「や、やるけど。新年越しちまうかなーアスも忙しいしなー」

年明けにはシェリアもラントへ戻るだろう。少なくともこれで四人。でも俺は、今集まってほしかった。

「クリスマスは、おいしいものをみんなで食べて、プレゼントを交換する日なんでしょ?」
「そ。うー俺超頑張って選んだのにー教官に手こずるのは予想してたけどパスカルにあんなに悩むとは思わなかった」

や、実際何あげればいいか一番わかんないのパスカルだと思う。普通の女の子が喜ぶものあげて喜ぶかどうかわかんない。身だしなみ気にしないし。下手にペンダントとかあげて失くされたらちょっと凹むし。
だったら、とソフィが言ったので、俺は顔を上げた。

「今じゃなくて、みんなが集まった日が、わたしたちのクリスマスじゃ駄目かな」

盲点だった。あとちょっと感動した。まっさらな子って時々怖いくらい真理を突く。

「……駄目?」
「……や、いい、それいいわソフィ」

机になつくのをやめてぐりぐり頭を撫でてやる。くしゃくしゃになった髪の下でソフィが楽しそうに悲鳴を上げた。ちなみに俺が頭ぐりぐりするのと髪梳かすのはセットだ。
日付を気にする必要があるのは俺だけ。それにしたって長年の習慣というだけの話だ。ここにキリストはいない。そもそもキリストの誕生日十二月じゃないらしいぜ説があるっていうし。よく知らないけど。

「よーしそうと決まればお使いだソフィ!」
「お使い?」
「そ。ちょーっとシェリアにプレゼント届けてきて?」

にっと笑う俺にソフィが首を傾げる。

「いいの? クリスマスしなくて」
「クリスマスやるぞーってお知らせすんのよ。今回は俺だけプレゼント用意したけど、次回以降はあいつらにもなんかやらせるつもりだったし?」

プレゼント持ってくんの忘れんな! って言って来て?
そう言うと、ソフィは笑って頷いた。

「絶対来てね、って言ってくる。……そうだ、次のクリスマス、わたしとシェリアが一つのプレゼントでもいい?」
「お、なんか思いついた? よしわかった、きっちり打ち合わせして来い!」

シェリアがどのあたりにいるか聞くつもりだろう、フレデリックさんを呼ぶソフィを見送った俺は、ふと窓の外を見た。

「……おおー。これもしかしてホワイトクリスマスいけんじゃね?」

俺らのクリスマスはまだ先ですけど。ちらちら窓を撫でていく雪を見て笑って、俺はもう一度ペンを執った。






 ストラタ:

「あなたにだそうですよ」

廊下で後ろから声をかけられ、振り返ったヒューバートは眉を寄せた。
背後に立っていたのは従兄で副官のレイモンで、差し出された手の上には見慣れない包みが乗っていた。

「……なんですか、それは」
「さあ。知りたくもありませんね。なにせ差出人はあの騒がしいご友人ですから」

やれやれ、と肩を竦める従兄に一応礼を言って包みを受け取る。「騒がしい」友人となると思いつくのは少数で、包みにはそのうちの一人の名が書かれていた。
開けたくない。非常に。何かとんでもないものが入っていそうで。さりとて開けなかった場合のやかましさも容易に想像できて、ヒューバートは溜め息を吐きながら包みを抱えて歩き出した。今は勤務中である。一度執務室に置いて、帰宅してから開ければ問題ないだろう。



 フェンデル:

「……何をしているんだ、パスカル」

大輝石研究所内の、荷物置き場と化した一室。
誰の目も届かない場所で休息を取りたかったマリクが扉を開くと、積まれた荷物を乗り越えようとしているパスカルに出くわした。

「……なんだ、教官かー。お姉ちゃんかと思ってびっくりしちゃったよ」
「なんだとはなんだ。というか、落ちるぞ」
「大丈夫大丈夫。あ、あたしがここにいること、お姉ちゃんには言わないでね!」

お願い! と両手を合わせて拝まれて、マリクは溜め息を吐いた。この姉妹はいつまで経ってもこれだ。また風呂に入るのをさぼりでもしたのだろうか。

「あー……まあ、今回は素直に謝っておけ」
「えー、やだよめんどくさい……」
「温水暖房の実験も兼ねているんだ、諦めろ。それと、ゆきみちから何か届いているぞ」
「ゆきみちから? なになに?」
「俺も知らん。直接確かめたらどうだ?」
「それもそうだね」

パスカルは身軽に荷物から飛び降りて、「またね教官!」と言いながら部屋を飛び出した。
マリクは苦笑しながらそれを見送り、次にウィンドルへ行けるのはいつだろうかとスケジュールを思い浮かべた。



 ウィンドル:

王城に着いて一通りの挨拶を交わした後、リチャードがしかつめらしい表情を崩して笑った。

「ちょっとだけ遅かったね、アスベル」
「は、……何か、至らぬところがございましたか?」

書状にあった日付には間に合っているはずだ。記憶違いだったろうかと記憶を探るアスベルに、リチャードは笑って首を振る。

「違うよ、そうじゃなくて。ゆきみちから、贈り物が届いているんだ。アスベルがそっちに向かうから、僕の分と一緒に送ると書かれていてね。
後で部屋に届けよう。僕も中は見ていないんだ。一緒に開けても構わないかな?」
「……喜んで」

臣下ではなく友人に向ける笑顔を浮かべたリチャードに、アスベルも同じく笑顔を向けた。



ストラタで、ヒューバートが包みを開けるべきか否か真剣に悩んでいる頃。
フェンデルで、案の定怒られているパスカルをマリクが見つけた頃。
ウィンドル王城で、久々に顔を合わせたアスベルとリチャードが笑いあっている頃。

どこかで楽しい計画を練っている二人の少女を思い浮かべながら、少年が一人窓辺で笑っていた。

「ねえ、みんな、……どうか幸せにね」

 MARRY CHRISTMAS!

20101214


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みなさまお久しぶりでございます、「アンバランスメビウス」管理人の ゆいな です。
ここから先はちょっと言いわけ。

「シェリアいないよ!」
あのこラントにいるもんだと思ってたのに一人赤十字しながら世界巡ってるんだもん…!
年末年始くらいは帰ってくると思うよ。多分ね。というわけで、そのうちシェリアのターン書くので許して下さい…。
「他の更新は?」
えーとペルソナの方は完全に作者がさぼってるだけですが、FFの方はハードの方が壊れかかってて起動できない状態です。作者が父親のDSをぶんどってくる日を待って下さい。

この小説は年内フリーです。どなたでもお持ち帰り下さい。管理人の名前だけ明記してくださいますようお願いします。

それではごきげんよう。いつかまた、どこかの夢の宮にて。

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あきゅろす。
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