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オリジナルSS

私立・Y学園に通う楠アキラ(くすのき あきら)には恋人が居た。
それは同じY学園の生徒──三井悟(みつい さとる)だ。
アキラは男、悟も──もちろん男だ。

悟はどちらかというと不良っぽいイメージで、茶髪にピアスというのが印象的。
もちろん女にもモテる。

一方、アキラは真面目でクラス一の秀才だった。
短い黒髪、きちっと着こなされた制服。

そんな悟とアキラが恋人になったのはたくさんの偶然が積み重なったもとにあった。





二人が恋人という関係になって二年。
大きなケンカをすることもなく仲良く過ごしていた。

そんなある日、アキラが委員の仕事で遅くなった時。
早く帰ろうと玄関を出ると、中庭の方に見慣れた姿を発見した。

「悟…?」

そう、そこには紛れもなく恋人の悟の姿。
一緒に…女の子も居た。

「っ…」

その光景がアキラの胸に深く突き刺さる。
気付いたら涙が溢れだしていた。

悟はモテるから──そんなことは分かり切っている。
よく女の子と楽しそうにしている姿も見かけていた。

でも、アキラと付き合うようになってからは違う。
いつもアキラにべったりで、女の子の告白は断り、仲良く話している姿も見かけなくなった。

『俺はアキラが一番だから。アキラだけを愛してる』

そう言って抱き締めてくれた時のことを今でもはっきり覚えている。

それなのに…悟の隣に居るのはどう見ても女の子。

「悟…っ、とる…」

名前を呼ぶ度に涙が流れだす。
早くそこから立ち去りたいのに、それとは裏腹に身体がいうことを聞いてくれない。

「アキラ?」

「!?」

地面に顔を向けて立ちつくしているアキラの耳に聞き慣れた声が聞こえてきた。

「さ、悟…」

驚いて顔を上げると、そこに居たのは悟だ。

「なんで…?」

「なんでって…それはこっちのセリフ。ってか、お前、何泣いてんの? どっか痛い!? それとも誰かにいじめられた!?」

「違う…。そんなんじゃないから」

こんなに心配そうな悟を見たら涙なんて止まってしまった。
悟にこんな顔をさせたくない反面、自分のために──と思うと嬉しさが込み上げてくる。

「大丈夫、なんでもないから。…それより、さ……女の子は?」

「女の子?…あ〜、原田のことか。…あっ、アキラ、もしかして原田にヤキモチでも焼いた?」

「っ!?」

図星をつかれ、アキラは返す言葉がなかった。

「大丈夫。アキラが気にするようなことは何もないから。ただ…」

「ただ?」

「ただ…ただな……原田のやつ…アキラが好きって…」

「えっ?…僕?」

てっきり悟が告白されているものだと思っていたアキラは首を傾げる。

「あぁ。原田のやつ…“私、楠君が好きなの。三井君って楠君と仲良いから協力してくれない?”ってさ。だから俺、“アキラは大事な恋人が居るからお前とは付き合えない”って言っておいた」

「ちょっ、悟! そんな勝手なこと言わないでよ…」

「勝手って…じゃあ、アキラは原田と付き合いたいの? 俺が居るのに…。アキラはやっぱり女の方がいいのか?」

今まで見たことないほど悟の顔は怖く、アキラは一瞬恐怖を感じた。
でも、ちゃんと自分の気持ちを伝えないと、と口を開く。

「違うよ。僕、さっき悟が女の子と一緒に居るの見て告白されてるんだと思って…辛くなったんだ。でも、そうじゃないって聞いてほっとした。だから、別に女の子がいいなんて思ってないから!……勝手なこと言わないでなんて言ってごめん。ほんとは嬉しかったよ。悟が“アキラには恋人が居る”って言ってくれて。…ただ、ちょっと恥ずかしくて……ごめん」

「アキラ…。そっか…。俺もごめん。でも、俺が好きなのはアキラなんだ。…俺はアキラが一番だから。アキラだけを愛してる」

「っ…悟」

悟の言葉がアキラの不安を総て脱ぐい去っていく。

『俺はアキラが一番だから。アキラだけを愛してる』

あの時と同じ言葉を悟は再び与えてくれた。

「僕も…悟が一番だから。悟だけを愛してる」

これがアキラの本音。
たとえどんなことがあってもこの気持ちは変わらないだろう。

END



【あとがき】
ここまで読んでくれてありがとうございました。
今回は裏なしです!
ちょっと初々しいカップルを目指しました。(笑)
執筆:2010/06/03

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