[携帯モード] [URL送信]

オリジナルSS

「ふっ…んっ…」

弟の部屋の前を通りかかった橘右近(たちばな うこん)はそこから聞こえる苦しそうな声に足を止めた。

(左近?…どうしたんだ?)

この声は紛れもない双子の弟──橘左近(たちばな さこん)のものだ。
やはり弟のこんな声を聞いて黙っていられるほどの右近ではなかった。

右近は小さい頃からずっと左近だけを見てきたのだ。
弟に抱いてはいけない感情。
分かっていながらも、右近は左近を愛してしまっていた。

「左近? 大丈夫か?」

言葉と同時に部屋のドアを開けると、右近の眼に信じられないものが飛び込んでくる。

「さ、左近!?」

なんと、弟はベッドに腰掛け、己の性器に指を絡めていたのだ。
その床にはズボンやパンツが落ちている。

「右近!?」

いきなり現れた兄に左近は眼を泳がせた。
まさか、こんなところを兄に見られるなんて、と泣きたくなる。

「左近…いつもこんなことしてんの?…誰のこと考えながらいつもオナってんの?」

ドアを後ろ手で閉め、鍵もしっかりと掛けた。
そして、左近の居るベッドにゆっくりと歩み寄っていく。

左近が逃げようと身を捩るが、それよりも早く右近が彼の腕を掴んだ。

その腕を引き、左近を自分の方に引き寄せる。
自然と近づく二人の距離に左近はドキッとした。

「ねぇ、答えてよ」

耳元でそう囁かれれば、左近にあらがう術はない。

「時々…してるよ。……う、右近のこと、考えて…」

「俺の…こと?」

思ってもみなかった左近の言葉に少しながら動揺してしまった。
そんな右近に左近はゆっくりと頷き、言葉を紡いでいく。

「僕…右近が…ずっと…その…好き、だったから…。……ごめん」

「なんで謝んの? 別に俺、迷惑なんて言ってないぞ。むしろ…嬉しいぐらいだよ。俺だって…左近が好きなんだからさ」

絶対に告げることはないと思っていた気持ち。
ひょんなことから両想いだと気付いた二人。

右近の告白に驚く左近。
そんな左近に、右近は…己の下半身が反応しているのに気付いた。
先ほど、自分が想いを寄せる相手のオナニーを見てしまったのだから仕方ない。

「左近…やっぱさ…こーゆーのは二人の方が何倍も気持ちいいと思うぜ?」

言い終わると同時に左近の身体をベッドに押し倒した。
自然と右近が左近に馬乗りになる形になる。
突然のことに左近は眼を見開いた。

「右近? どうし──んぅっ」

左近の言葉を遮るように重ねられた右近の唇。
その合わさったところがとても暖かい。
最初は驚いていた左近だったが、いつの間にか虜になっていた。

始めは軽いキスだったのが、だんだんと激しいものに変わっていく。
左近の口内にぬるっとした感触。
それが右近の舌だと分かるのに時間はかからなかった。

「んっ…んぅ…はっ、ん」

舌を包み込むように舐めとられ、左近の身体から力が抜けていく。
ずっと想い続けていた相手から与えられるキスはとても甘く、とても気持ち良かった。

そんな風に左近が幸せ気分に浸っていると、突然服の中に何かが入り込んでくるのを感じた。
その正体は紛れもない右近の手。
それは服の中で左近の身体を撫で回していく。

「んっ、ん…」

その間も右近の口付けは止まらなかった。
唇が離れたかと思ったら、今度は角度を変えて再度あてがわれる。

唇と手で与えられる快楽に左近はもう何も考えられなくなった。
ただ右近の背中に手を回し、必死にしがみつく。

「左近、服脱がすぞ?」

ようやく唇が開放されたかと思うと、右近がそう問いかけてきた。
左近もこれから行われる行為の予想くらいつく。
いつも右近を想いながら一人でシていたのだから。

でも、いざとなればやはり恥ずかしかった。
自分の身体を見て右近が幻滅しないか、と。

それでも、やはり右近と繋がりたいという気持ちのほうが大きかった。
もっと近くに右近を感じたいのだ。

「右近…僕、ほんとに右近が好きなんだ。だから…右近になら何されてもいい。…右近の好きなようにして」

「っ…そんなこと言って…。ほんとは我慢しようと思ったんだけど…左近がそこまで言うんじゃ…仕方ないな」

「え?…なんのこと?」

淡々と紡がれる右近の言葉に理解が追いつかず、左近は少しばかり混乱した。

「いや、なんでもない。…すぐに分かることだから」

そんな意味深な言葉で左近が分かるわけもない。
だが、右近が「すぐに分かる」と言ったのだから、左近は待つことにした。

「ま、その前に…まずは左近の中を慣らさないとな」

左近が頷くのを確認すると、右近は左近の服に手を掛け、手際よく脱がしていく。
だんだん露になってくる自分の身体に、左近は眼を瞑った。

「どうした? 恥ずかしい?」

「うん。ちょっと…」

「やっぱりやめるか?」

「っ! ううん! 僕、ちょっと恥ずかしいだけで、全然平気だから。右近になら…ほんとに何されてもいいって思ってるよ。右近が大好きだから」

「左近…」

左近の口から溢れ出す自分に対する想いに、右近は天にも昇るような気持ちになる。
本人には言ってないが、いつも左近を想いながらヌいていたのだ。

逸る気持ちを抑えながら左近の窄まりに舌を這わせる。

「んっ…」

入り口を舐め、中に舌を捻り込んだ。
舌を動かして中を解していく。

そして、今度はそこに指を入れていった。
まずは一本、左近の中を掻き回す。

「…左近」

「っ、な…にぃ…あっ」

「お前、初めてじゃないな? ここをこんなに緩くして…いったい何人の男と寝たんだ?」

「ちがっ…は、ん…ああ…っ」

右近の言葉に必死に否定しようとしたが、与えられる快感のせいでうまく言葉を紡げなかった。
それでも誤解されるのだけは――しかも他の男と寝てるだなんて、左近には絶えられるはずがない。

「う、こん…話す、話す、から…ゆっ、指…や…」

「…分かった。ちゃんと聞くから」

左近の訴えに、右近は指を左近の中から引き抜いた。

「…僕、ずっと右近とこんなことしたかった。…でも、僕は男の子だから、絶対に無理だって想ってたんだけど…考えれば考えるほど右近が好きって気持ちが溢れてきて…一人で……お尻弄ってたんだ。その…バイブ、とか…使って…」

[次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!