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オリジナルSS

 
「真澄、よく来たわね。あら? このべっぴんさんは誰やの?」

久しぶりに会う息子に喜びながら、その眼を隣の葵に向けて訊いてくる。

葵ははっとし、繋いでいた手を咄嗟に離した。
自分のことを知らない母にのっけから「真澄さんの恋人です」なんて言えるわけがない。

「あの…真澄さんの……と、友達の中森葵です」

「あら、そうなん。今日はわざわざ真澄に付き合うてくれはったんですか? 迷惑でしたでしょ? すみませんね〜」

真澄の母は相変わらず陽気な声で淡々と話してきた。

そんな彼女を見ていると、お見合いの話を断りに来た、なんて言えなくなる。
ましてやその原因が自分と付き合っているからなんて…葵の口からはとても言えなかった。

そんな葵の心中を知らない母親は二人を家の中へと招き入れる。

そして、二人を居間に連れていくと、早速お見合い写真を取り出したのだった。

「ねぇ、母さん考えたんやけど、この方なんていかがかしらね?」

「あのさ…母さん」

「ん?…ああ! これは母さんがとやかく言うことやないわね。真澄が好きな人を選んだらええんよ? もちろん、他にお付き合いしてる人が居るんやったらその方やってええし」

「違うんだ。今日来たのは…母さんに話があるからなんだ」

いよいよカミングアウトする時がきた。
話が話だけに、一気に緊張が増す。
それは葵も同じだった。

それでも腹を括るしかない。
ふう、と一息吐くと、真澄はゆっくりと口を開いた。

「俺は…結婚はしません」

「…真澄? どないしたん?…別に母さんは今すぐになんて言うとらんのよ。真澄が今はまだ結婚はええいうんやったら母さん待つつもりなんやから」

「違うんだ。俺は結婚するつもりはありません。…いつか話さないといけないって思ってた。…こいつ──葵は俺の恋人なんです」

葵の手を握り、母に総てを話した。

いきなり告げられる事実に母は当然のことながら動揺している。

「何…言うてるん? 葵君って…男の子やん?」

「男でも関係ない。俺は葵を愛してる。これからも離すつもりはない」

たとえ世間が認めてくれなくても真澄はそんなことどーでもよかった。
ただ、隣に葵が居る──それだけで幸せなのだから。

「真澄…。お母さん…僕も…僕も真澄が好きです。だから…真澄がお見合いするって聞いて…すごく嫌でした。お母さんが結婚してほしいって思ってるのは分かります。でも…僕は真澄と別れたくなんかないんです!」

真澄がちゃんと話してくれたのだから今度は自分の番だ、と葵は正直な気持ちを告げた。

「…真澄、本当に結婚するつもりはないん?」

「ありません。俺は葵以外の人間を愛することなんて出来ないから」

結婚するつもりはないと、母の眼をしっかりと見据た。

「…分かったわ。あんたがそこまで言うんやったら結婚はせんでいい。でも…母さんよく分からへん。男同士で恋人なんて…悪いけど、今は祝福出来へん。でも、本当に愛してるんやったらいつか母さんを納得させてちょうだい」

「母さん…ありがとう。必ず認めさせるよ」

いつか二人の愛を認めてもらえるように──。

今は祝福出来ないと言った母の言葉が遠回しの応援だと分かっていた。
世間では絶対に許されない愛。
でも、それさえも覆せという…母の愛情。

来る前は緊張や不安でいっぱいだった二人の心は母の愛に満たされていた。

END


【あとがき】
ここまで読んでくれてありがとうございました。
シリアスな感じにいきたかったが…微妙です。(笑)
カミングアウトということで──今回はなんとかいい方向に持っていきました。

そして、これも最初は男主夢の作品。
男主の名前を真澄にしました!
執筆:2010/05/20

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