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オリジナルSS

中森葵(なかもり あおい)と湯崎真澄(ゆざき ますみ)は男同士で恋人という──世間からみればおかしな関係にある。
だが、世間がなんと言おうが、二人はそれで幸せだった。
お互いに好きなのだから性別など関係ない。

そうやって今まで過ごしてきたのだ。

「真澄、電話だよ」

久しぶりの休日。
そこにかかってきた一本の電話が大きな波乱の幕開けとなるのだった──。

「誰から?」

「お母さん」

「お袋!?」

普段電話などかかってこない相手なだけに、何かあったのでは、という不安が真澄を襲う。

葵から受話器を受け取り、それを恐る恐る耳にあてた。

「もしもし?」

いったい何の用件なのか?
悪い話だったらどうしよう?

そんなことばかりが浮かんできてしまう。

「あ、真澄。久しぶりだね〜」

だが、受話器の向こうから聞こえたのはとても明るい母親の声。

予想外のトーンに真澄は唖然としてしまった。

「あのね、今日はいい話を持ってきたのよ」

「いい話?」

「そう。真澄も三十五歳にもなるんだから、そろそろ結婚とかしないのかなって思って。もし結婚を考えてる相手が居るのなら母さん何も言わないけど、居ないんだったらお見合いしてみる気ない?」

淡々と発せられる母の言葉を真澄はただ黙って聞いているしかなかった。
だが、最後に聞こえた「お見合い」という言葉には過剰な反応をみせてしまう。

「見合い!? そんなのいいよ!」

自分には葵が居る。
だから女性と結婚する気なんて微塵もなかった。
そもそも考えることすらしなかったのだ。

だが、母親からすれば三十五歳の息子が結婚というのは当然のことだと思っているのだろう。

それでも母親の期待に応えることは出来ない。

だから、いきなり見合いをしろなどと言われ、真澄は感情のコントロールが出来なくなっていた。

大声で放たれた真澄の言葉は近くに居た葵にも当然聞こえていた。

「真澄…? お見合いって…」

お互いに三十歳を過ぎた大人。
結婚の話が出ても不思議はない。
でも、真澄が知らない女と見合いをするなんて──葵には耐えられるはずがなかった。

「…母さん、そのことはまた改めて話そう」

今ここで話すよりは後日ちゃんと話す方がいい。

こうなったら葵のことも打ち明けなくてはならないだろう。
そのこともいろいろと考える必要がある。

そして、来週の日曜に実家に帰る約束をし、真澄は電話を切った。

「葵…」

不安そうな表情を浮かべる葵に大丈夫だ、と安心させるように頭を撫でてやる。

「真澄…お見合いするの?」

「しないよ。俺には葵が居るんだからするわけないだろ? だけど、母さんが出てきてしまった以上、ちゃんと話さないといけないと思う。…葵のこと。俺は総てを話す覚悟だが…葵はどうだ? やっぱり嫌か?」

「ううん。嫌じゃない。嫌なわけないよ。だって…真澄が知らない女の人とお見合いするのなんて絶対に嫌だ。だから、お母さんにちゃんと話して」

男同士で恋人だなんて話したらショックを受けるだろう。
でも、真澄の母にとってはどんなに残酷なことでもきちんと話さなければならない。
たとえ認めてもらえなくても──。















約束の日曜日、真澄は実家に帰る為、駅に来ていた。

「じゃ、葵。行って来るから」

「うん…」

笑顔を浮かべながらも、葵の表情はどこか寂しげだった。

「大丈夫、すぐ帰ってくるから」

「うん。……真澄! やっぱ僕も行く!…一緒に行っちゃダメ?」

真澄のシャツに手を伸ばし、自分も連れていってほしいと縋りつく。

自分が行ってもどうにもならないだろうということは想像できた。
それでも真澄を一人で行かせたくなかったのだ。

「…分かったよ。一緒に行こう」

こんなに不安そうな葵を一人残して実家に行けるほど、真澄の精神は強く出来ていない。

すぐに葵の分の切符を買い、新幹線に乗り込んだ。

そして、真澄の実家──大阪を目指す。










電車やバスを乗り継ぎ、ようやく真澄の実家に到着した。

「真澄…」

自分から着いてきたものの、やはり緊張してしまう。
それを和らげだくて隣に立つ真澄の手をぎゅっと握り締めた。

意を決してインターホンを押す。
すると、すぐに真澄の母が待ち侘びたように出迎えてくれた。

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あきゅろす。
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