庭球BLSS
1
ベッドの上に体を投げ出し、越前リョーマは天を仰いでいた。
考えるのはテニスのこと…ではない。
最近付き合いだした立海の幸村精市のこと。
自分でも不思議なくらいに幸村のことが頭から離れないのだ。
なんて女々しいんだろう…。
「幸村さん…」
その名前を紡ぐだけで会いたくなる。
最後に会ったのは一週間前。
学校が違うのだから仕方ないが、やはり会いたい気持ちはとめられなかった。
だからといっていきなり会いにいくのも悪いと思い、我慢していたのだが、今日は部活が休み。
いつもは部活に集中していたからよかったが、何もすることがないと考えてしまう。
「んん〜…」
寂しさを吹っ切るように伸びをし、ごろんと体を反転させた。
「こら、休みだからってそんなに怠けてちゃダメじゃないか」
「!?」
大人びた透き通った声。
今この部屋に居ないはずの人物のそれに、リョーマはあわてて飛び起きる。
すると今ずっと考えていた人物が眼に入ってきた。
「幸村…さん…」
「さっき君のお父さんが入れてくれたんだよ」
どうして、と思っていると、それを察した幸村が説明してくれた。
父はすぐにどこかへ出かけたらしい。
「越前君、今何考えてた?」
「ぇ?」
「俺はずっと君のこと考えてたよ。好きな人に一週間も会えなかったんだ。当然だろ?」
「す、好きな…人?」
「君に決まってるだろ」
付き合ってるんだから、と頭を撫でられ、リョーマは頬を真っ赤に染め上げた。
確かにそうだが、面と向かって言われると恥ずかしいものがある。
「ぁ…〜…」
「やっぱり君は可愛いよ」
ちゅっと音を立てて唇同士が触れ合った。
久しぶりに感じる幸村の温度に、リョーマは一週間分の寂しさなんて吹き飛んだ気がした。
「んっ…」
たった数秒のキス。
そんなわずかな時間のことに胸が以上なまでに高鳴ってしまう。
「リョーマ、こっち向いて」
俯いたリョーマの頬に手を添え、自分の方へ向けさせる。
「っ、ゃ…」
だが、眼が合った瞬間、ふいっと逸らされてしまった。
「なんでだい?」
「だって…恥ずか、しい…」
「そ? じゃあ…」
恥ずかしがるリョーマを見て頬を緩めたあと、逃がさないというようにその体を抱き締めた。
自分よりも大きな腕に包まれ、幸村とのその近さに、リョーマは腕から逃れようとしたが、彼の力には適わない。
「〜…」
少し恥ずかしくはあるが、いつかは慣れるのかな、と思い、リョーマは眼を閉じた。
END
*あとがき*
友達からリクエストしてもらった幸リョで激甘でした。
砂糖より甘く、と言われましたが…甘いかな?(笑)
読んでくださり、ありがとうございました!
執筆:2010/12/28
神奈樹じゅん
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!