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企画

二月十四日は俗に言うバレンタインデー。
普通は女の子が男にチョコを渡す日。
そんな中、沢田綱吉は一つのチョコレートを手にしていた。
別に誰に貰ったわけでもない。
それは恋人──獄寺隼人に渡すために購入したものだ。

「はぁ〜…」

でも、やはりいざとなると渡す勇気がない。
クラスの女の子達が獄寺にチョコを渡すためにまとわりついていて、その中に入っていけるほどの神経は持ち合わせていなかった。

朝からずっとこんな調子で、綱吉はチョコを渡すことを諦めていた。
それでなくても、獄寺の周りには女の子が絶えず、二人になれる時がほとんどないのだ。

「ツナ、今日何回目だ? ため息」

「山本…」

もう放課後だというのに教室でぼんやりしている綱吉を見かねた山本が頭を掻き回してくる。
それだけのことなのに妙に心が落ち着いた。
一日、獄寺に会えなかったせいで、せっかくのバレンタインが暗い気持ちで過ぎていったのだから、ため息だって出てきてしまう。

「で、獄寺にチョコ渡せたのか?」

「ぁ…それは…」

「まだ、か。なんとなくそんな感じだとは思ってたけどな」

朝から獄寺の周りには女がうじゃうじゃしてたからな。
無理もないか。
でも、せっかくツナがチョコを用意したってのに…。

「なぁ、獄寺なら今は屋上に居るぜ。しかも、一人で」

「嘘っ!」

「ほんと」

もうチャンスは今しかないぜ、と言われ、綱吉は慌てて屋上へと向かった。
手にはチョコを握り締めて。



「獄寺くんっ」

山本の言葉通り、屋上には獄寺一人だった。

「十代目、どうしたんですか? そんなに慌てて」

「俺っ、獄寺くんに渡したいものがあって」

後ろ手に隠していたチョコの箱を取り出し、ゆっくりと深呼吸する。
少し頬を染めながら、それを差し出した。

「え? 十代目、これ…」

「ぁ、の…今日はバレンタインだから…。男からチョコなんて気持ち悪いかもしれないけど…」

「そんなっ! 気持ち悪いなんて、全然! むしろスゲー嬉しいです!」

そう言った獄寺の顔は本当に嬉しそうで、綱吉も頬を緩める。
このチョコは目的の相手には届かないと思っていたが、諦めなくてよかった、と獄寺の手に己の指を絡めた。

END



*あとがき*
ハッピーバレンタイン!
ツナからチョコってのも可愛いかな、と思いました。
執筆:2011/02/14
神奈樹じゅん

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