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サブBLSS
エスパーなら、さっさと察してみろ(古キョン)


「抱かせてくれませんか?」

放課後のSOS団の部室で放たれた一言。
幸いこの部屋には古泉一樹とキョンの二人だけなので、ハルヒ達に聞かれる心配はなかったが、こんなところで言う言葉でもないだろう。

それ以前に男が男に言っていること事態がおかしいことだ。
長門や朝比奈さんにならまだしも、男の俺に言うなんて古泉はどうかしている、とキョンは眼を見開いた。

「な、んの冗談?」

からかわれているだけだと思いたい。
でも、古泉の眼は真剣で、本気なんだということが伺える。

それ以前にいきなり「抱かせろ」なんて言うか!?
普通は「好き」とかからだろ!
いや、男にその言葉もおかしいな…。

「冗談なんかじゃありません。本気ですよ。あなたを抱きたいんです」

「ふざけんな! そんなにセックスがしたいなら他を探せよ。なんで俺なんだよ…。お前なら女くらい、いくらでも探せるだろ」

自分でもなんでこんなに腹を立てているのか分からなかった。
男から「抱かせろ」と言われたからか?
…全く分からない。

「それ…本気で言ってるんですか?」

爽やかな古泉の声が低くなったことにキョンは気づいていなかった。
それすら出来ないくらいに取り乱していたから。

「あぁ…──っ!?」

キョンが頷くと、何かが切れたように古泉が行動を起こした。
俯くキョンの腕を掴み、その身体を壁へと押しつける。

当然だが抵抗するキョンの両手を、古泉は片手で簡単に捉え、キョンの頭上で固定してしまう。
振り払おうとしたが、悲しいことに古泉の方が力が強く、びくともしなかった。

「何するんだ! 離せっ」

「ダメです。離したら逃げるでしょ?」

「当たり前だ!」

こんなことをされれば、逃げるに決まってる!
そう怒鳴ってやりたかったが、古泉の言葉で言えなくなった。

「ただセックスがしたいだけじゃない。キョン君が好きだからですよ。なのに他のやつを抱けだなんて…」

「古、泉…」

驚いた…。
古泉が泣いている。
いつもの彼からは想像出来ないくらいに悲痛な顔は俺の心にチクチクと、刺のように突き刺さった。

「…お前が俺を好きなんて…初耳だ」

「すみません。なかなか言えなくて」

ふっ、と口元を緩めた古泉はどこか可愛くて、キョンは無意識に手を伸ばしていた。
そのまま古泉の頬に手を添え、彼の唇に自分のそれを重ね合わせる。

「キョン…君…?」

「そーゆーことは…普通、最初に言うだろ。お前は順番がおかしいんだよ」

あんなに腹を立てていた理由が分かった気がした。
俺は古泉に「好き」と言われたかったのか…。

その証拠に、さっきの古泉からの告白が嬉しくて堪らない。

「すみません。…キョン君、僕はキョン君が好きです。キョン君は…僕のこと、どう想ってますか?」

そんなの…答えは決まってる。
俺はどーでもいい相手にキスなんかしないんだ!
しかも男になんて、尚更。

「…察してみろ。超能力者なら簡単だろ?」

このまま本音を言うのは悔しかったから、古泉が気づくまで黙っていることにした。

「そんな…。いくらでも超能力者でもさすがに無理です」

「だったら絶対言わねー」

とっととエスパーとかなんとかで察せ、と思いながら、キョンはふっと口の端をあげる。
あまりにも困った顔をする古泉が可愛かったから。
つい顔が緩んでしまった。

「だったら僕の良いように考えてもいいんですか?」

「…勝手にしろ」

「では、勝手にします」

今の今まで困り顔をしていた古泉の顔がいつもの笑顔に戻ると、キョンの身体が暖かいものに包まれた。
少し背の高い古泉の身体は、すっぽりとキョンの身体を収めている。
その体温の温かさで、キョンは安心感を感じていた。

「僕達、恋人ってことでいいんですよね?」

頭上から聞こえた勝ち誇った声に、キョンは少しの悔しくなる。
でも、それよりも嬉しさが勝ってしまい、古泉の背中に自ら腕を回していた。

「お前がそう言うんなら…別にそれでいい」

素直じゃないキョンが可愛くて、古泉はくすりと笑みを一つこぼす。
そして、いとおしそうに腕の中の頭を撫でた。

「はい、分かりました」

「〜っ」

どこまでも余裕な古泉の態度が気に食わないが、今はそれも悪くない、と思ってしまう。

END



*あとがき*
初の古キョン、いかがでしたか?
ツンデレなキョンを書きたかったんだが…まぁ、こんな感じで!(笑)
読んで頂き、ありがとうございました。
執筆:2010/12/16
神奈樹じゅん

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