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愛しいダメガネ(銀新)
甘
「おぃ、ダメガネ。お茶持ってくるヨロシ」
ソファーに踏ん反り返って酢昆布を食べている神楽が、掃除をしているダメガネこと志村新八に命令する。
「はいはい」
だらだら怠けているだけなら自分で取りに行けばいいじゃないか、と思ったが、それでも素直に従ってしまうのが新八なのだ。
ほうきを机に立て掛け、酢昆布をしまってある戸棚に移動する。
「酢昆布、酢昆布…あった」
お目当ての酢昆布を二つ手に持って神楽の所まで持っていってやった。
新八がそれを渡せば、神楽は嬉しそうに頬張りだす。
「く〜ん…」
「ん? どうした? 定春」
「く〜ん」
「そうか、そうか。散歩に行きたいアルか?」
「ワン!」
犬の言葉が分かるのか、とツッコミたくなるような光景だ。
「じゃ、私は定春の散歩に行ってくるアルね」
「行ってらっしゃい」
定春と楽し気に出掛けていく神楽を見送り、新八は再び掃除を始めるのだった。
「ちょっと銀さん」
「ん〜? なんだ、ダメガネ」
仰向けでソファーに寝転がっているこの家の主──坂田銀時は先ほどからずっとジャンプを読んでいる。
そもそも万事屋は銀時の家なのだから新八が掃除してるのも変な話だ。
まぁ、まずは居候である神楽が一番働くべきなのだろうが。
もはやここ万事屋では新八が母親的ポジションに居るのが当たり前になっていた。
「そんなダラダラしてばっかいないでください。仮にも万事屋の主でしょ!」
「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーうるさいぞ。発情期ですか、コノヤロー」
「誰が発情期ですか! 銀さんじゃあるまいしっ」
絶妙なツッコミ。
しかし、この言葉を新八は後悔することになる。
「ほ〜…俺が発情期ね〜。ま、強ち間違ってねーか」
何かに火が点いたように銀時が新八に歩み寄っていく。
反射的に後退りすれば、銀時の手によってソファーに押し倒されてしまった。
「ちょっ、銀さ──んぅっ」
突然唇に柔らかい感触がし、新八は眼を見開く。
目の前には銀時の顔がアップで映し出され、新八はドキッとしてしまった。
重ねられた唇から銀時の熱がダイレクトに伝わってくる。
気付けば夢中になっていた。
「んっ、はっ…」
たった数秒のキスがやけに長く感じられる。
ようやく唇が離さ、新八は大きく息を吸い込んだ。
「ん〜…やっぱ邪魔だな」
新八が息を整えている間、銀時は顎に手を当てて何かを考えている様子だ。
しばらくそうしたあと、銀時の手が新八のメガネへと伸ばされた。
ひょいっと一瞬にしてそれは銀時の手の中に奪い取られてしまう。
「ちょっ、銀さん? メガネ取ったら見えな──んっ」
メガネを剥ぎ取られた新八の唇に再び銀時の唇があてがわれる。
「うん。やっぱキスする時には邪魔だな」
「なっ…銀さんのバカ」
そうツッコミながらも、たまにはこんなのもいいか、と思う新八なのだった。
*END*
【あとがき】
ここまで読んでくれてありがとうございました。
昔に書いた作品なんですが、内容はほとんど変わってます。(笑)
二人きりになると銀さんはこんな感じやと思います!
執筆:2010/11/09
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