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猫(銀土)
シリアス甘
雨の中に佇む猫。
もとい黒猫のような人間。
その口元には煙草が加えられていた。
彼は真撰組副長──土方十四郎。
鬼の副長と恐れられているような人物だ。
「何してるんだ?」
「?」
聞き慣れた声が耳に入り、地面に向けていた顔を上げる。
そこには死んだ魚の目をした銀髪が立っていた。
「銀時…」
小さく呟いた名前。
それは恋人であり、今目の前で自分を見つめてくる男──坂田銀時、その人だ。
「多串君? 風邪引いちゃうよ?」
「うるせぇ…」
「なんで傘もささないでこんなとこに居るわけ?」
銀時は自分の傘を土方の頭上に差し出し、降り続ける雨を遮ってやる。
「んなことしたらてめぇが濡れるだろーが」
「俺はいいんだよ。風邪引いたって、どーせ依頼も入ってねーし」
銀時がそう言い放てば、地面に腰を下ろしていた土方が立ち上がった。
そして、銀時の腕を掴んで傘を彼の頭上に戻す。
同時に自分もその中に入れば、自然と互いの肩が触れた。
「…帰る」
「仕事は?」
「非番」
「そう。で、どっちに?」
土方が非番の日、彼はよく万事屋に泊りにくる。
いや、正確には銀時に呼び出されると言った方がいいかもしれない。
「…てめぇが決めりゃいいだろ」
「じゃ、万事屋ね」
「しゃーねーな」
とは言いつつも、銀時が言う前に土方の足は屯所とは逆方向──万事屋へと向かっていた。
「猫方十四郎…いいかもね」
「なんだよ、それ」
「ん? 可愛い黒猫の名前」
くすっと笑えば、土方の眉間に皺が寄る。
「俺は猫じゃねーよ」
「いや、多串君は猫っぽいと思います。いつもあっちにフラフラ、こっちにフラフラ。でも俺はそんな多串君の笑顔にムラムラしています」
「え!? 作文!? つか、ムラムラすんなよ!」
土方がツッコめば、銀時の口から笑いがこぼれた。
そして、二人は雨の降る道を万事屋に向かって進んでいく。
男同士で相合傘なんて恥ずかしいはずなのに、なぜか嬉しくもあったのは気のせいではなさそうだ。
*END*
【あとがき】
ここまで読んでくれてありがとうございました。
昼間にちまちまとメールに書いてました。(笑)
最初は猫をテーマに書こうって思って、そこから膨らましてみました。
執筆:2010/11/20
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