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触れられないなら(佐為ヒカ)
切甘
佐為はいわゆる幽霊。
だから俺たち人間には触れない。
でも、俺は佐為が見える。
佐為と話せる。
それだけで幸せだった。
進藤ヒカルに憑く藤原佐為はヒカル以外の人間には見えない。
まだ小学生のヒカルは兄が出来たようで嬉しかった。
しかし、その気持ちは大きくなっていく。
見えるだけじゃ意味がない。
話せるだけじゃ満足出来ない。
佐為に触れたいという気持ちがヒカルの中で日に日に大きくなっていった。
「ヒカル? さっきからぼーっとしてどうしたのですか?」
「佐為…。お前は…幽霊なんだよな?」
「何を今更言っているのです?」
女性のように綺麗な顔を傾げる佐為の姿に、ヒカルは気持ちを止められなくなる。
今自分の中にあるモヤモヤした気持ちを全て曝け出してしまいそうだ。
「なんでお前は幽霊なんだよ。なんで…触れないんだよ。手を握りたいって思っても出来ないし…もっと佐為に近づきたいのに…」
「ヒカル…」
この小さな少年はいつも真っ直ぐに私を見つめてくる。
私はヒカルが愛しくて仕方ないのです。
佐為の手がゆっくりとヒカルの頬に近付けられる。
頬にぴたっとついた綺麗な手。
それは決して触れているわけではないのに、ヒカルは佐為の手のぬくもりが伝わってくる気がした。
触れられないのなら、せめて触れる素振りをして、そのぬくもりを感じたい。
ヒカルが佐為に触れたいと思うように、佐為もヒカルをその腕に抱き締めたいと思っていたのだから。
*END*
【あとがき】
ここまで読んでくれてありがとうございました。
まだまだ初々しい佐為ヒカでした。
佐為ならではの幽霊ネタ!(笑)
執筆:2010/11/08
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