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味付け(角和谷)
甘エロ/意地悪/言葉攻
今日は珍しく和谷が夕飯を作った。
出来たのは──真っ黒に焦げた魚。
「焼き魚なら出来ると思ったのにな〜…」
皿の上に乗った焼き魚──というか、墨に近い物体を見つめながら、深々とため息を吐く。
もちろん、こんなのを伊角に出せるわけもなく、捨てようと考えた。
だが、次に残る問題は夕飯。
自分から作ると言った手前、意地でも何かを作らなければ、と焦れば焦る程、時間だけが過ぎていく。
「ただいま〜!」
「っ…!」
どうしようかと途方に暮れていると、ドアの開く音が聞こえた。
同時に聞き慣れた声が耳に入ってきた。
「和谷!…って何、この臭い」
ダイニングに入って来た伊角は異常な焦げ臭さに眉を顰める。
「い、伊角さん! いや、あのっ…これは…その…や、焼き魚を…作ろうとしたんだけど…失敗して…それで…」
どう伝えていいか分からず、言葉に詰まってしまう。
「ありがとう」
和谷が口籠もっていると、伊角の口からそんな言葉が──。
「え?」
当然怒られると思っていた和谷は鳩が豆鉄砲食らったような顔になっていた。
「俺の為に頑張ってくれたんだろ? 嬉しいよ」
伊角は怒るどころか笑顔で頭を撫でてきた。
それはもう──本当に嬉しそうな顔をして。
「でも、夕飯…どうしよう?」
焦げた魚に眼を向けながら、和谷は苦渋の表情を浮かべた。
「大丈夫、これ食べるから!…あ、和谷は俺が焼いた魚食べて」
額に口づけを落とすと、伊角はキッチンに向かった。
しばらくして伊角がダイニングに戻ってきた。
手には先程の焦げた魚と伊角が作った焼き魚。
その焼き魚を和谷の前に置き、焦げた方を自分の前に置き、伊角も椅子に腰掛ける。
「あの…伊角さん?」
「ん?」
「いや…それ食べるの?」
明らかに魚ではない物体を指差しながら、和谷は眉をしかめた。
「もちろん。和谷が作ったものは全部俺が食べるよ」
そう言って魚──とは言えない物体を少し箸で摘む。
口の中に入れると墨のような味が広がった。
「不味いでしょ?」
和谷の不安そうな眼が伊角を見つめる。
だが、伊角は笑って「美味しいよ」と言ってのける。
結局、伊角は発言通り総て食べたのだった。
その夜、伊角は一時間以上もトイレに籠もっていた。
「伊角さーん! 大丈夫〜?」
「だ、大丈夫…」
和谷が呼び掛けると、言葉とは裏腹にとても大丈夫そうではない声が返ってきた。
さっきからこのやりとりが何度も続いている。
「っはぁ〜…」
ようやくドアが開いたかと思うと、伊角の疲れたような顔が眼に入る。
「い、伊角さん? ほんとに大丈夫?」
和谷が心配そうに問い掛ければ、伊角が苦笑を浮かべながら額に手を当てた。
「ちょっと食べ過ぎたかな…」
「いやいや…食べ過ぎとかじゃなくて食べたもんが悪か──んぅっ」
明らかに自分の魚のせいだ、と詰め寄りながら言ってくる和谷の腕を伊角は賺さず捕えた。
そして、半ば強引に和谷の唇に自分のそれを重ねる。
キスはだんだんと激しさを増し、和谷は息苦しさから伊角の胸を手で叩いた。
「っは…っ」
唇が解放された瞬間、和谷は大きく息を吸い込んだ。
たった数秒のキスだったが、和谷には長く感じた。
「なぁ、シよ?」
何を、と訊くまでもなく、和谷には言葉の意味が理解出来た。
そして、ゆっくりと首を縦に振る。
「ん、ふっ…」
ベッドに倒され、熱いキスを繰り返す。
時々、唇が離されては、角度を変えてまた口付けられた。
「ごめん、今日は手加減出来そうにない…」
余裕のない伊角に、和谷は何も言わず、伊角の首に腕を回した。
大丈夫と言うかのように──。
服に手を掛け、託し上げる。
すると、和谷の小さな突起が露になった。
「和谷のここ、尖ってきてるよ?」
胸の突起を人差し指と親指で摘みながら、意地悪い笑顔を浮かべる。
「ふぁっ…」
伊角に触れられたところが熱く疼くのが分かった。
「下、大きくなってる」
耳元で伊角さんに甘い声で言われ、下半身が更に熱くなる。
「あっ」
足を閉じて隠そうとするが、それよりも早く伊角に足を捕えられてしまった。
そのまま左右に開かされ、ズボンの上から和谷のモノを撫で上げる。
「ああ…っ」
「ズボンの上からでも感じるの?」
やんわりと撫でていた手の動きを早めながら言った。
「あ、あ…」
布越しに与えられる刺激にもどかしさを感じ、自ら腰を動かしていく。
「和谷? 腰動いてるけど?」
「は、ぁ…だって…」
伊角さんの言葉にすら下半身が反応しちまう。
直接触れてほしくて仕方ない。
「だって、何?」
「ちゃんと…触ってほしいんだ…」
潤んだ瞳で見つめられ、伊角の下半身がドクンと脈を打つ。
性急にズボンと下着を剥ぎ取り、和谷を生まれたままの姿にする。
布越しに刺激された昂ぶりは大きく天を仰いでいた。
「もうこんなになって…。和谷って可愛い」
和谷の昂ぶりに唇を寄せ、丹念に舐めていく。
「あ、はっ…すみ、さ…」
伊角の口内で刺激され、先走りが溢れだす。
「和谷…俺も、限界…」
余裕のない伊角の声。
和谷は何も言わずに頷いた。
窄まりに指を射れ、和谷の中を丹念に解していく。
指は二本、三本と徐々に増えていった。
「伊角さん…も、射れて…」
「っ…あぁ」
見上げてくる和谷の表情が色っぽく、伊角は胸が跳ね上がった。
和谷の中から指を抜き、代わりに伊角の昂ぶったモノがあてがわれる。
内壁を押し広げながらゆっくりと中へと侵入してきた。
「あっ…ふ、んぅ…」
総て入り切ったところで和谷に口付けた。
「んん…っ」
「んっ…動いていいか?」
数秒の口付けの後、伊角が耳元で甘く囁いた。
「うん…」
伊角の背中に手を回して縋りつく。
「あ、んぅ…あ、あ…ん、はぁ…」
中を擦られる度に口からは甘い声が漏れる。
身体が熱く火照り、眼からは薄らと涙が溢れた。
それを伊角が舌でぺろっと舐めとる。
「大丈夫か? どこか痛い?」
行為中、よく和谷の瞳から涙が零れる。
それが何の涙かは分からない。
そんな和谷に伊角はいつも心配そうに問い掛けるのだ。
「ううん。へーきだから…もっと激しくしていいよ」
伊角の優しさを感じながら笑みを浮かべながらそう言った。
いつも優しい彼が激しく出来ないのは和谷が一番分かっているが、本当は滅茶苦茶になるまでしてほしい。
「激しくなんて出来ないよ。和谷が辛いだろ?」
ほら、伊角さんは必ずこう言う。
「やだ〜…もっと激しくしてよ。…俺、伊角さんをもっと感じたい」
「!…和谷、そんなこと言って…手加減出来ない」
腰を掴み、腰を打ち付ける。
いつもより激しいそれに和谷は息切れ切れに反応をみせた。
「は、ぁ…ああ、すみ、さ…ん、は…あああっ」
いつもより激しい刺激に和谷は呆気なく達してしまった。
「っ、和谷…くっ」
和谷が達した衝動で中を締め付けられ、伊角も白濁を放った。
翌朝、眼を覚ました和谷はキッチンへと足を運んだ。
昨日失敗した分、今日こそは──と思いながら料理を始める。
「和谷?」
料理が出来た時に後ろから自分を呼ぶ声がした。
「あ…伊角さん。起きたんだ」
「あ、うん。…何やってんだ?」
フライパンの上に乗った少々焦げ臭いものに眼をやる。
「これは…や、野菜炒め?」
自分で作ったのに疑問系で言ってくる和谷。
無理もない。
それは昨日の焼き魚同様、料理と言える代物ではなかった。
「野菜…い、炒め?」
明らかに焦げた野菜達を見つめながら、伊角は「これが?」と言いたげに眼を見開いた。
「ごめん…。また失敗した」
申し訳なさそうにうなだれる。
そんな和谷の頭に伊角の手が触れた。
安心させるように撫でてやる。
「大丈夫。貸して」
フライパンを手に取り、和谷に背を向けた。
数分後、伊角が皿に乗った焦げた野菜達を持ってきた。
「食べてみろよ」
そう言われて、和谷は一口食べてみた。
それは見た目とは裏腹にすごく美味しい。
「ちょっと味付けをね」
少しの工夫で美味しく生まれ変わった野菜炒めを二人で一緒に食べたのだった。
*END*
【あとがき】
ここまで読んでくれてありがとうございました。
ちょっと長くなりました…。
ただ料理ネタをやりたかっただけです。(笑)
☆adios amiga☆
執筆:2010/03/25
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