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サブBLSS
年上の威厳?(角和谷)
シリアス→甘/無理矢理


今はプロ試験の真っ只中。
今年こそは受かりたい。

だが、そんな焦りのせいか、俺は負けてしまった。

「はぁ〜…」

公園のベンチに腰掛けながら今日の対局を振り返る。

そして、口から出てくるのはため息ばかり。
頭の中には「ああすればよかった」や「こうしとけば…」という後悔しか浮かんでこない。

「伊角さん? どうしたの? ため息なんか吐いて」

「?……和谷」

誰かと思い、声がした方を振り向く。
そこには首を傾げる和谷の姿があった。

「何情けない声出してんだよ。伊角さんらしくないじゃん」

伊角の隣に腰を下ろしながら顔だけを左に向ける。
近くで見る伊角の顔は酷くか弱いものだった。

気付いたら身体が勝手に動いて、俺は伊角さんを抱き締めていた。
そうしないと…消えてしまいそうだったから。

「和…谷?」

突然のことに驚く伊角だったが、それはすぐに安心へと変化したのだった。





翌日、伊角は自分のベッドで眼を覚ました。
隣を見ると、スヤスヤと眠る和谷の姿が眼に入る。

(そうだ。昨日、あのまま和谷を…)

昨日、あのまま二人は伊角の部屋へと向かい、夜を共にした。

隣で眠る和谷は身に何も纏わず、その身体には赤い跡がいくつも付けられていた。
眼は赤く腫れ、頬には泣いたであろう跡。

そんな和谷の姿を見れば自分がした酷いことを嫌でも思い知らされる。
後悔しても事実は消えない。

「ん〜…い、すみ…さん?」

「和谷? 身体、大丈夫か?」

眼を覚ました和谷に心配そうな表情で問い掛ける。

「あぁ、大丈夫だよ。ちょっと身体痛いけど、別に伊角さんが気にすることじゃな──って、うぇぇ!?」

身体が辛いだろうに、笑顔で言ってくる和谷を力一杯抱き締める。

そんな伊角の行動に暫し混乱するが、その腕の暖かさに頬を緩めた。

「ごめん。俺、無茶苦茶やりすぎた…」

「だから、大丈夫だってば!」

「でもっ!」

いくら和谷が大丈夫だ、と言ってくれてもダメなんだ。
俺は負けた悔しさや辛さ、プロ試験への焦りから和谷を酷く抱いてしまった。
その事実は消えない。

後悔すると同時に自分への苛立ちが湧いてくる。

(このままじゃダメだ)

今のままの自分では和谷をまた傷つけてしまうかもしれない。
兎に角、今は一人になろう。
一人になって頭を冷やさないとダメだ。

「悪い、和谷。俺──」

「行かないで」

床に落ちた服を身に纏い、和谷に背を向ける。
部屋を後にしようと歩みを進めようとした時、和谷のか細い声が聞こえた。
同時に袖を掴まれる。

「和谷…?」

「行くなよ!」

「でも、このままだと、またお前に酷いことをしてしまうかもしれない。俺はそんなことがしたいんじゃないんだ。ただ…ただ和谷を愛したいだけなのに…」

掌をギュッと握り締める。
それを包み込むように和谷の手が触れた。

「伊角さんさぁ…何でそんなに気負ってんの? 一人で何でも抱え込んでさ。少しは俺に頼ってくれたっていいじゃん! そりゃ、俺は伊角さんより年下で頼りないかもしんねーけど…」

「和谷…。ごめん、俺、お前がそんなこと思ってたなんて全然気付かなかった。…年上だから“しっかりしてないと”とか、“情けないとこ見せらんねー”とか、強がることしか考えてなかった。…ごめん」

今、気付いた。
俺はもっと和谷に頼っていいんだ、と。
二人で支え合うから恋人なのだ。
それを和谷に教えられた気がした。

「そうだよ。俺は伊角さんの恋人なんだから、もっと頼ればいいんだよ」

そう言って微笑む和谷を心からいとおしいと思った。

これからも傷つけてしまうこともあるかもしれない。
すれ違うことだってあるだろう。

だけど、この最高に可愛い恋人を離したくない。
二人で居れば幸せなんだから──。
*END*



【あとがき】
ここまで読んでくれてありがとうございました。
初の角和谷!
テーマを決める時に『落ち込む伊角さん』がいいな、と思って膨らんだお話でした。
最後は甘い感じにしたかったのですが……いかがでしたか?
☆adios amiga☆
執筆:2010/03/13

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