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からくり城奇譚
3 落ちた先にあったもの(2)最短距離
「てめえなー! 助けてやろうかって人間をいきなり穴に落とすたー、いったい全体どういう了見だ!? 俺が魔法使えなかったら、大ケガしてるか死んでるぜ!? てめえ、ほんとは俺らを殺したいんじゃねえのか!?」
「まあまあ」

 とガイをなだめたのはノウトだった。

「その気持ちは僕にも痛いほどよくわかりますが、ここは一つ冷静になりましょう。僕たちの目的はあくまでもお姫様を無事に助け出すことでしょう?」

 ガイは無言でノウトの顔を見やり、すぐに前に向き直った。

「そうでした」
『確かに、何の説明もせずにいきなりここへ落としたことは大変申し訳なく思っています』

 ノウトの耳にもあまり申し訳なさそうには聞こえない声でロリアンは言った。

『しかし、あなたは魔法使いだということですし、きっと大丈夫だろうと踏んであの仕掛けを使ったわけです。ああするのがいちばんの最短距離だったものですから』
「俺には死への最短距離だったような気がするがね」

 ふてくされた顔でそう毒づいてから、ガイは腰に手を当ててふんぞり返った。

「で、どこにまっすぐ進むって? 見たとこ出口も何もないようだが?」

 ガイの言うとおりだった。
 二人が今いる場所は、ほぼ正方形をした狭い空間で、これまでと同じように床も壁もすべて石でできていた。
 そして、出入り口のようなものも、やはり一つも見当たらなかった。

『今、開けます』

 しかし、ロリアンがそう答えると、壁の一部が縦に裂け、見る間に人が一人通れるくらいの入り口が現れた。その動きは相変わらず滑らかである。

『ここが、私が閉じこめられている機関室です』

 だが、ロリアンの声は依然として天井のほうから降ってきた。

『ですが、人が楽に歩ける場所ではありません。せめて、設計図をお渡しできればよかったんですが……』
「おまけに真っ暗」

 ひょいと中を覗いてガイ。

「こんなんじゃ、一度壊れたら直すのが骨だな」
「そりゃあもう、山ほど明かりを持ちこんで直すんですよ」

 そう答えたのはロリアンではなく、時計職人≠フノウトだった。

「換気のために通気孔くらいはありますがね。いずれにしろ、やっかいな代物ですよ。……しまったなあ。こんなことになるんなら、ランタンの一つや二つ、用意してくるんだった」
「ああ、裸のままの火じゃまずいわけね」

 ガイはそう言うと、頭上に浮かんでいた炎に手を差しのべた。
 それに呼び寄せられたかのように、炎がガイのほうへと下りてくる。と、突然白く輝いた。
 そのあまりの眩しさに、ノウトは思わず目を覆った。

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あきゅろす。
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