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灰にうずめた白百合1
 優しい腕で、泣きそうな顔で、震える声で、抱き締めてくれた。

『大丈夫。例え私の命が尽きても、必ず貴方は守られます』

 誓いの響きを込めて囁き、そっと腕を解いた彼女は俺に背を向けた。

 かつてとんでもない重圧を、尊敬と崇拝と嫉妬と憎悪を背負わされて戦場に向かった細い背中が、今は死へと続く階を恐れのない歩みで登っていく。

 俺は成す術もなく後ろから見送るしかなかった。

 だからせめて、最後に視線を交錯させたときに浮かべたあの慈愛に満ちた微笑みを忘れないと、彼女が信じる神に誓った。





 焦土と化した自国の領地を目にして、呆然と佇んだあの日。

 初めて会った彼女は、まず俺の有様を笑った。

 決してけなす意味を持ってのことではなかったと知ったのは、後になってからだ。

『随分とぼろぼろなんですね』

『……そりゃあそうでしょ。あの暴れん坊にもう百年近く蝕まれてるんだから』

 その頃の俺は、本当に弱っていた。

『お前なんかが生まれるずっと前から、俺はこんな状態のままだよ』

 だから、見て分かる当たり前のことをわざわざ指摘してきた小娘を、少なからず疎ましく思った。たぶん態度にも出した。

 その思いが、自国の民の長い戦争による荒んだ感情からきていたものだったと、彼女は理解していたのだろうか。

 見た目の歳は同じくらいか、俺の方が少し小さいくらいだったけど。

 けほけほと咳を漏らせば、彼女は眉尻をちょっと下げて困ったように微笑んだ。

 目の前でおずおずと膝が折られる。

 ぎこちないそれは、最大の敬意を表す格式張った挨拶の形。

 そんなズボンよりも、君には花のように美しいドレスを身に纏っていてほしかったな。


『初めまして、わが祖国。私は貴方を助けに参りました』


 そう言って靴先に落とされたキスを、その時の俺は何も言わずに受け入れた。





 それからの彼女の戦歴は目を見張るものだった。

 軽やかに戦場を舞い、神懸かった強さで隣国の兵を圧倒していく。

 人々は彼女を聖女と呼び、彼女はそれに笑顔で応えた。

『体調はどうですか、フランシス』

『……以前に較べたらずっとマシ。それに、みんな明るい顔をしているから、すごく気分も良いよ』

 そう素直に告げると、彼女は殊更に優しい笑みを浮かべる。

 ああ、ずっと側にいてくれたらいいのに。

 俺と変わらない背丈の彼女の身を包むのは、今やズボンでさえない重苦しい鉛色の甲冑だ。

 対する俺は、人形のようにひらひらの薄い寝衣を着て、病人のためにあてがわれた城の一室に引き籠もっているだけ。

 なんて情けない。でも取り繕うこともできない。これが俺、国の現状だ。


『なあ、君はこのままでいいのか?』

 一度だけ、聞いたことがある。

『何がです?』

『君は女の子だろ。普通の幸せだって、今からでも望めば手に入る。それなのに、何を好き好んで……』

 言い立てようとすると、彼女は突然人差し指で俺の唇を塞いだ。

 驚いて目を見開くと、彼女は声をたてて笑う。

『いいんです。私は貴方を守りたい。それだけじゃ駄目ですか?』

 誰よりも強くて、誰よりも愛に溢れていた人だった。

 俺の言葉を遮ったその指で、俺の髪を一房掴んで口許に寄せる。

『そこまで男らしいと俺困るんだけどなあ……』

 若干拗ねたように呟くと、また楽しげに彼女が笑ったので、同じ蜜色をした俺よりも短い髪に指を絡めて、肩口に頭を抱き寄せた。




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こっぱずかしいな!コレは!!
長くなるからやっぱり切った
バランスの悪さが神懸かりですね


1400sの若仏容姿
勝手に16ぐらいだとimgしてます

Ouch!!


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あきゅろす。
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