★ スタホ殺人事件 ★
リベンジA
直線オルコックを突き放し逃げるペガサスメタリカ、信じられない勢いで追い込んでくるバイアリーとトレジャーヴァンダムの2騎。
ゴールまでどれが勝つのか全くわからない。
内で粘るペガサス、中から追い込むバイアリー、大外駆け上がるヴァンダム、三者三様の様態でゴール板に飛び込む。
『かぁ〜っ、こりゃわかんねぇ』
駿介が思わず呟くほどの大接戦。ペガサスが残ったようにも見えるし、バイアリーの追い込みが届いたようにも見える。ゴール板通過時の勢いはヴァンダムが一番良かった。
写真判定の様子が大画面モニターに映し出される。
中央のバイアリーがペガサスをハナ差差し切って@着、A着にペガサスメタリカが残り、トレジャーヴァンダムは追い込んだがペガサスのハナ差B着だった。
『ふう〜っ…』
駿介は興奮を抑えるかのように深く息を吐いて落ち着こうとした。
「いいもの見せて貰った。」
そう頭の中で整理して、自分の馬の配合に取り掛かる。
漬け終わっている2頭、シグマジャイヴとラムダティラミスでは、シグマジャイヴの方が期待が高い。
先にラムダティラミスを配合することにする。
「初戦マイラーズ4.5倍だから、確実に上がってくれよ〜。頼んまっせ」
祈るような気持ちで配合ボタンを押す。
配合相手はライスシャワー。
ニックスは十分かかっている。
産まれたのはお転婆な牝馬。
名前は『ラムダアルテシェイラ』とつけた。
頭突き→監視付草食べ→2頭疾走。
演出でみるべきところはない。
条件戦も、短中×長の配合だったので、それぞれ距離を使ってみたが、距離コメも馬身コメも出ない。
条件戦3連勝のサラコメ。
「なんだ、出してからのお楽しみか…。」
駿介は少し落胆しながら調教と飼葉を与えた。
『こいつは弥生で確認っと。』
駿介はテキパキと翌週の平安ステークスでラムダアルテシェイラの調教を終えるとさっさと放牧し、シグマジャイヴの配合に取り掛かる。
こちらは弥生3.2倍@着からの全漬けだから、駿介の希望としてはスプリング3.0倍を願っているが、少し欲張り過ぎの自覚もある。
まあ配合してみなけりゃわからない。
配合相手はプライドを予定している。
『どれどれ…。』
生産画面でプライドを選ぼうと、繁殖牝馬の画面をスクロールしていたその時、
『おっはよ〜ございま〜す』
突然両肩を叩かれ、声を掛けられた。
『ほぎゃっ(=゜ω゜)』
どうも駿介はびっくりすると、伊井と同じ訳のわからない擬音を発する癖があるようだ。
伊井のどこかエキセントリックな感じがする『ホギャッ(=゜ω゜)ノ』に対して、駿介の『ほぎゃっ(=゜ω゜)』は純日本的発音の『ほぎゃっ(=゜ω゜)』ではあるが、周りからしたら同じに聴こえるようである。
驚いた駿介が振り返ると亞穂菜が満面の笑みで見つめている。
『おっ、おはよ。び、びっくりさせないでくれよ、もお〜。』
駿介は振り返り亞穂菜に答えた。
『そんなに驚かなくたって(笑)』
亞穂菜がケラケラ笑う。
『こっちはノミの心臓なの。』
そう言ってサテに視線を戻す。
『ほぎゃっ(=゜ω゜)』
本日2発目の『ほぎゃっ』炸裂、しかも1発目よりでかい『ほぎゃっ』
サテに映し出されている配合は、シグマジャイヴとハルウララ。
『ど、ど〜してハルウララ???』
目が点になる駿介…。
理由は簡単。亞穂菜に声を掛けられたとき、駿介の右手は繁殖牝馬のスクロールボタンを押したまま。声を掛けられた駿介は、右手の人差し指をスクロールボタンに添えたまま、器用に首だけ振り向いて亞穂菜の方を向いた。そして亞穂菜に声を掛けたタイミングで指していた指先がズレ、ハルウララの選択画面で配合ボタンに触れてしまったのである。
『な、なんでハルウララ〜(泣)』
駿介の動揺とは裏腹に当然のように演出は続く。
寄り添い…
草食べ…
おっさん登場…
『なんでぇ…』
駿介が情けない声を出して落胆する。
が、なんとここで画面は右からスクロール。
『ほぎゃ〜っ(=゜ω゜)ノ』
本日、3回目の駿介の『ほぎゃっ』炸裂。しかも本日最大音量の『ほぎゃっ』で、今度は音も伸びている。
そう、起死回生の一発逆転、「逆転演出」発生である。
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