★ スタホ殺人事件 ★
翻弄
亞穂菜はニコニコしながら2人をせき立てる。
なにがなんだか判らぬうちに駿介と伊井はブルースカイを出た。
『おいおい、亞穂菜ちゃん、どこに行くつもりだぁ?』
伊井が駿介に話し掛けるが
『んなこと俺が知るかよ。』
駿介も当惑した顔で答える。
亞穂菜はスキップでもしているかのように楽しげにどんどん先に歩いて行く。
やがて、亞穂菜が足を止めて振り返り、満面に笑みを浮かべて
『最初はやっぱりここだよね』
と左手で「ここだよ」と示した。
駿介と伊井は亞穂菜が指した方に一緒に首を振ると、そこには「甘味どころ 蜜バチ」と書かれた看板があった。
『え〜っ』
駿介と伊井が思わずハモって驚くも、亞穂菜はまるで意に介さず、さっさと店の中に消えて行く。
『おいおい、マジかよ…。』
いい歳したオヤジ2人が入って行くには腰が引ける店構え…中では高校生らしき女の子達が、キャーキャー言いながらパフェやあんみつらしきものを頬張っている。
『ホントにここに入るの?俺たち…?』
さすがに入るのは気が重い。2人がグズグズしていると亞穂菜が店から出てきて
『何してるんですかここの店、とっても美味しいって評判なんですよ』
と言って駿介の左腕を掴み、グイグイと引っ張って行く。
『は、八兵衛の焼き鳥が…。』
駿介がそう口にしたが、亞穂菜の耳には届かない。
グイグイ引っ張られて店内に入り、女子高生の刺すような視線に耐えて、駿介と伊井は店の奥のテーブルに座らされた。
『気晴らしにはまず食べるのが一番』
亞穂菜がメニューを駿介に渡す。
「気晴らしには確かに食べるのも良いけど、俺らが食べたいのはこういうのじゃなくて…。」
と駿介が周りを気にしながら小声で喋るが、亞穂菜は聞こえないのか
『決まりました?』
と催促してくる。
駿介と伊井が仕方なしにメニューを見てみるが、食べたくなるようなものがある訳がない。
『すいませ〜ん』
亞穂菜はそんな2人を無視するかのように、さっさと店員を呼びつけ、店員が来ると
『あんみつとチョコレートパフェ、それに抹茶ミルク。』
と矢継ぎ早に注文し終える。
『駿介さんと伊井さんは?』
と聞かれ、
『その3つ亞穂菜ちゃんの分?』
と駿介が驚いて聞き返すと
『当たり前じゃないですか』
と亞穂菜が笑って答える。
その答えに駿介と伊井が呆気にとられていると
『じゃあ、2人はここのお薦めメニューの『メロンパフェ』と『苺大福』で決まりね』
と一方的に決められてしまった。
2人には何が起こったのか理解できない様子で、ただただポカーンと口を空けてマヌケな面を晒しているしかなかった。
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