★ スタホ殺人事件 ★
決戦@
亞穂菜がニコニコして近づいてくるのを見て、駿介は逃げ出したくなった。
「く、来るなぁ…」
駿介は願ったが
『これでダービーなら何倍くらいで出られるのかなぁ?』
亞穂菜が嬉しそうな声で駿介に訊いてきた。
『そ、そうだね…、でもみんな出走してくるから、オッズは割れてあんまり期待できないかも知れないよ。やめておいた…』
『負けたくないんです!』
駿介の言葉を遮るように亞穂菜が言い切った。
「あちゃ…亞穂菜ちゃん負けず嫌いなんだよなぁ…」
駿介は強気な女性にはからっきし弱いタイプなのだ。
『そんなにこだわらなくっても…』
『あたし、ダービー勝ちたいんです!まだ勝ったことないし!出さなきゃ勝てないって言ったの駿介さんですよ!』
『あぁ、そ、そうだったね。』
駿介は自分が自分で情けなくなってしまっていた。亞穂菜は煮え切らない態度の駿介に背を向けると、
『逃げないでくださいよ。』
と伊井に言ってサテに戻って行った。
『なぁ、駿介、俺どうしたら良いんだよ…』
泣きそうな表情で伊井が救いを求めてきた。
『出さなきゃいいだろう?』
『だってダービーで完全制覇なんだよ、俺…』
「あちゃぁ…よりによってダービーで完全制覇かよ。」
駿介はさっき、居闇のリーチがダービーでGT制覇なのを、チラッと覗き見していた。
こうなりゃ三者三様、ダービーは引けないだろう。オッズ割れ必至の三強激突は避けられないところと悟った。
ヴィクトリアマイルの時点でダービーの登録状況を確認すると、予想通り『ショッキングピンク』『トロッコトロトロ』『ヤマノテセン』『チョウシデンテツ』が登録されており、ほかのプレイヤー馬も2頭登録されていた。
伊井は散々悩んだ挙げ句に『スカイエメラルド』をダービーに登録した。
もうこうなればあとはなるようにしかならないので、駿介は却ってスッキリした。
ダービーと言えば、先日、この店で丸1日スタホした時に、のり厩舎がダービー4連勝という離れ業をやってのけたのを目の当たりにした。
1頭目と3頭目は怪物らしきオッズだったが、2頭目と4頭目は20倍台のオッズだったが、1日で4勝はまずもうお目にかかれないだろうと駿介は思っていた。
そして迎えたダービー。
@人気『スカイエメラルド』2.9倍
A人気『トロッコトロトロ』3.8倍
B人気『ショッキングピンク』5.6倍
C人気『チョウシデンテツ』13.0倍
さすがに怪物2頭にオッズを喰われて『ショッキングピンク』のオッズが伸びない。
レースは『ヤマノテセン』が大逃げし、『ショッキングピンク』と『チョウシデンテツ』が3番手、4番手。『トロッコトロトロ』が後ろから3番手で『スカイエメラルド』は最後方を追走。
画面が切り替わり、4角曲がり切る手前から居闇のペイボタン連打のリズムに合わせて『トロッコトロトロ』が猛然とまくりはじめ、ふた呼吸置いて『スカイエメラルド』が追ってくる。
『ヤマノテセン』は直線向いてすぐに逆噴射し、先頭が『ショッキングピンク』に替わった。
まさにまくりの王道で一気に『トロッコトロトロ』が『ショッキングピンク』を圧倒的なスピードで交わして先頭に立つ。
残り1ハロンの攻防になったところで『トロッコトロトロ』の脚色が鈍り、後ろからMAXで『スカイエメラルド』が追い込んでくる。
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