★ スタホ殺人事件 ★ 残像 駿介は見かけた後ろ姿が気になったが、ちょうど別れ道にさしかかり、亞穂菜に 『駿介さん、お付き合いいただき、ありがとうございました。』 とお礼を言われたので、 『こっちこそありがとう。』 と答えて亞穂菜と別れた。 そこからの帰り道で先ほどの2人が居闇と誰かだったのか、何度も思い返してみたが、答えは出なかった。 アパートに戻った駿介は、消えた『シグマヴォルテクス』のことを思い出しながら缶ビールを片手にテレビをぼんやりと眺めていた。 「弥生限界オッズか…」 溜め息をつきつつ、ぼんやりしているうちに缶ビールが空になった。 「くよくよしていても仕方ないか…」 駿介は『シグマヴォルテクス』に固執している自分が情けなくなり、 「よっしゃもう一発限界オッズ叩き出してやるか」 と自分に気合いを入れて、少し早いが布団に入ることにした。 その頃、先ほど駿介が見掛けた男2人は、廃工場の前で口論になっていた。 『もう勘弁してくださいよ…。』 『うるさいなぁ〜。言うとおりにやりゃいいんだよ。』 『だってあの店はダメじゃないですか…』 『あぁ、あの店はな。』 『えっ?あそこじゃないところでやれってことですか』 『あぁ、そういうことだ。』 『ムリですよ、ムリムリ』 『そんなこと言えるのか?えっ?』 ジャンパーの男の手元にナイフが光っていた。 『やめてくださいよ脅したって無理なものは無理なんですって』 『うるせぇ』 ドサッ、ドサドサッ… 2人が揉み合いになる。 『やめてくださいってば』 片方の男が両手を伸ばした勢いでジャンパーの男が倒れる。 『うっ』 ジャンパーの男が呻き声をあげて倒れる。 『うっ、う〜っ…』 それっきりジャンパーの男は動かなくなった。 もう1人の男が 『ど、どうしたんですか…ふざけないでくださいよ…』 恐る恐るジャンパーの男の様子を覗き込むが、男の左胸に持っていたナイフが突き刺さり、夥しい血が床に広がってきていた。 『えっえ〜っひ、ひぇ〜っ』 男は慌ててその場から逃げ出した。 [←] [戻る] |