★ スタホ殺人事件 ★ 疑念 駿介は自分のサテに戻って目を疑った。また、サテの画面が競馬場から厩舎に変わっていたのだった。 「また店員がサテを拭いたのか?」 駿介は午前中の出来事を思い出していた。 駿介は一旦それで自分を納得させようとしたが、矛盾があることに気づいた。 駿介と伊井が昼飯を食べに行く際に、店員の早間くんに断って、サテに「休憩中」の札を刺して貰ったのだが、その際に早間くんはサテを拭いていたのだ。 「たかだか30分くらいしか経っていない、しかも殆どプレイしていない俺のサテを拭くか?」 「でもサテ掃除で廻るのは早間くんだけとは限らない…」 駿介の頭の中では、次々と疑問が浮かんでは、それを打ち消す理由をまた考えるという作業が繰り返された。 『どうした?思い込んだような顔して…』 伊井が声を掛けてくるまで、サテの後ろに立ち尽くしていた駿介は、その一声で我に返った。 『あっ、いや、何でもない。』 そう言って駿介は自分のサテに腰をおろした。 「考えすぎか…」 何とか自分の頭の中の整理をしおえてスタホに集中しようとしていたが、集中させてくれたのは皮肉にも居闇の馬のオッズだった。 きさらぎ賞に、居闇の『レッドブルータス』が2.4倍で出走してきたのだ。 「『トロッコトロトロ』といい、この『レッドブルータス』といい、今日の居闇はどうなっているんだ!」 駿介は思わず天井を見上げた。そして『レッドブルータス』の正体を知るために、大画面モニターに見入った。 『レッドブルータス』の父は『トロッコトロトロ』、そして母は『レインボーブルース』。居闇が自家製配合をやったのだった。 駿介は驚いた。居闇はこれまで徹頭徹尾C馬配合で、しかも120週使い切りのスタイルだったのだ。 それが『トロッコトロトロ』はWBCT勝ち途中継承、配合相手に自家製馬と、今まで見せなかったスタイルで馬を作ってきたのだった。 駿介自身、共同通信杯で2.4倍の馬は作ったこともある。 自分の目で見た最高オッズは、クロハリさんが作ったSSの2.2倍だ。クロハリさんはこのSS以外に2.3倍の馬も作っていて、この2.3倍デビューの『クローンハリアー』が32,000枚を稼いでブルースカイの店内殿堂1位となっている。 「居闇が怪物連続なんて…是が非でもダービーってことか…」 駿介は、自分の期待馬発動に不安が広がっていた。 [←] [戻る] |