ペルソナ少年とかき氷 2 目の前におれがいる。 鏡に映っているのか、それともドッペルゲンガー的な超常現象なのかはわからない。 もっとも有力なのは、この空間が夢であるというパターン。 おれはおれを見つめる。 さらさらで清潔感のある髪を七三に分け、知的な金属フレームのめがねをかけるという何のひねりもない優等生の格好をしているおれ。 引き結んだ薄い唇は冷たい印象で、切れ長な二重の瞳はいかにも頭がよさそうだ。 おれはそれをみつめてため息をつきたくなった。 お分かりの方もいるだろうが、おれは天才でも、冷静沈着な副会長でも、クールな美形でもなんでもない。 それらはすべておれが作り上げた、キャラというものだ。 いやだって、せっかく高校に入るしもてたいなとか思って。 視力が悪くなってきたから眼鏡買ったんだけど、それが異様に似合っちゃって、頭よさそーに見えるねー、って妹が言うから、そのキャラで行こうかなって思っただけだ。 ちなみに高校は男子校。 おれはそういう性癖の持ち主なので、そういう目的で男子校を選んだ。 親からは反対されたけど、親自身がかなり特殊な性癖を持っていたらしくおれがどうしてもというともう強くはいえないみたいだった。 こうして、頭いいキャラでモテモテで高校生活謳歌するぞって入学したはいいけど、ひとつ予想外なことが起こった。 頭いいキャラで行こう、とはいってもしばらくすればみんなキャラだってわかってからかうだろうなって高をくくっていたんだ。 それが何の間違いか、おれのキャラは見破られることなく、しかもそれに付随した余計なキャラまでつけられてしまった。 みんなが求めるままその理想のキャラを演じるうちに、もう元には戻れなくなった。 おれの当初の目的どおりおれはモテモテになれたけど、正直今は後悔している。 おれは勘はいいほうだけど、天才なんて大層なものじゃないから成績を良くするのには苦労した。 一年のころなんて、本当に血反吐を吐くくらい努力したな。 今は勉強の仕方もわかってきたからそんなに苦ではないけど。 何がつらいって、クールを装うのが一番つらいかもしれない。 ほんとうのおれは、わりとどんくさい。 お金を確認もせずに家を出ちゃうし、携帯の充電も忘れるし、どっちかって言うと甘党だし、家族には結構甘えるほうだし。 そんなおれが冷静沈着でクールな美貌の生徒会副会長とかww 実際、妹や兄には散々笑われた。 でも、そうやっていろいろあったけどなんとか二年と半分をこのキャラで乗り切ってきたのだ。 あと半年だし、もうちょっとがんばろうとは思うけど、大学に入ったらこんな馬鹿らしいことはやめようと思う。 いざもててみてもそれが素の自分じゃなかったら悲しいだけだって、嫌というほどわかったから。 心の奥に苦い失恋の味がこみ上げる。 目の前のおれがそれをあざ笑うように唇をゆがめた。 “本当のお前を愛してくれればいいけどな” [*前へ][次へ#] [戻る] |